微熱に軽いせき、命にかかわる肺炎の兆候かも 風邪との見分け方は

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【主治医が見つかる診療所】(テレビ東京)2017年11月30日放送
「ついカゼと間違えやすい命に関わる呼吸器の病気」

   微熱や軽いせきが出た時、多くの人は「風邪を引いちゃったかな」と思うだろう。しかし、命にかかわる重篤な肺炎の初期症状の可能性があり、甘く見てはいけない。

   番組では、肺炎で最も多い「肺炎球菌性肺炎」について、風邪との見分け方や予防法を詳しく解説した。

体が弱っていると熱が出にくい

   東京都に住む山下幸子さん(仮名・83歳)に異変が起きたのは、2017年4月だった。

   10日間の旅行で四国八十八ヶ所にお参りに行ったが、帰る間際にせきが出始めた。帰宅すると37度程度の微熱も出て、軽い風邪だと思った。

   近所の病院では風邪と診断され、処方された薬を飲んで安静にしていたが、2日後に体がひどくだるくなって歩けず、激しいせきも止まらなくなった。

   かかりつけの呼吸器内科にタクシーで行ったが診療時間が終わっていて、たまたま帰宅するために病院から出てきた医師が発見して救急車を呼んだ。この時の医師が、池袋大谷クリニックの大谷義夫院長だった。

   山下さんは風邪ではなく、「肺炎球菌性肺炎」だった。肺炎球菌という細菌が肺に入って増殖し激しい炎症を起こすもので、肺炎全体の約25%を占める、肺炎の中で最も多い病気だ。急速に進行し、3日~1週間ほどで命にかかわるおそれもある。山下さんも、大谷氏が発見した時はすでに命が危険な状態だったという。

   悪化するまで気付けなかった理由は、熱が出なかったからだ。人の体は細菌やウイルスを退治するために熱を上げるが、高齢者や体力が低下している人は熱が上がりにくい。肺炎になると高熱が出るイメージが強く、微熱程度だと風邪だと片付けてしまいがちなのだ。

白血球が発見できない恐ろしい細菌

   肺炎球菌性肺炎と風邪との見分け方を、秋津医院の秋津壽男院長が解説した。

秋津氏「わかりやすいのはタンの色。普通の風邪はほとんどがウイルス性の感染症なので、白っぽい、透明っぽいタンが多いが、黄色、緑、サビ色っぽくなっていたら、肺炎球菌のような細菌感染症が疑われる」

病院に行けば、尿検査で肺炎球菌に感染しているかどうかがわかる。怪しいと思ったらすぐ受診しよう。

   危険な肺炎球菌だが、体の中で退治されにくいという怖い特徴もある。

   肺炎球菌の細胞の表面には、「きょう膜」という殻がある。普通の細菌は白血球が食べて退治するが、肺炎球菌はきょう膜のせいで敵だと認識できず、食べられずに生き残ってしまうのだ。

   肺炎球菌の退治には、左脇腹にあるこぶし大の臓器「ひ臓」が要となる。

   ひ臓だけでしか作られない「マージナルゾーンB細胞」という免疫細胞が、白血球が見逃した肺炎球菌を見つけ、きょう膜に「抗体」という目印を付ける。すると白血球にも肺炎球菌が見えるようになり、退治してくれるのだ。

   ひ臓は40代から軽く、小さくなっていき、それにともなってマージナルゾーンB細胞も減少し、肺炎球菌を退治する力もダウンしてしまう。

   肺炎球菌性肺炎の予防には、マージナルゾーンB細胞を活性化、パワーアップさせる「肺炎球菌ワクチン」が有効だ。

   65歳を過ぎたら一度は接種すべきだが、そしがや大蔵クリニックの中山久徳院長は、65歳未満でも、糖尿病や呼吸器疾患、免疫疾患がある人は接種するよう勧めた。該当する人は是非医師と相談を。

   日本薬科大学の丁宗鐵学長は、肺炎予防に漢方薬の補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を推した。

   病気の悪化を防ぐには食欲が低下しないようにするのが大事で、服用すれば胃腸の働きを整え、食欲不振の改善が期待できるという。

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