日本に約16万人の患者がおり、安倍首相もこの病気であることを自ら明かしている国指定の難病「潰瘍性大腸炎」。慶応大学などの研究チームが、漢方薬の生薬が有効であることを科学的に実証し、米医学誌「Gastroenterology」(電子版)の2017年11月号に発表した。
効果があると実証された生薬は、リュウキュウアイ(藍)などの植物から抽出した「青黛(せいたい)」。古くから染料や化粧の顔料、また口内炎や咽頭炎、湿疹などに用いられてきた。
血便や下痢、激しい腹痛、1日20回以上もトイレに
慶応大学の発表資料によると、潰瘍性大腸炎は大腸に慢性の炎症が起こり、大腸の粘膜がただれたり、破れたりする病気。血便や下痢、激しい腹痛に襲われ、1日に20回以上もトイレに駆け込む患者もいる。原因は不明だ。近年、症状を抑える薬が相次いで登場しているが、これらの薬では症状を抑えられない難治性の患者は大腸を全摘する手術を余儀なくされている。
研究チームの金井隆典教授らは、青黛に含まれているインジコ、インジルビルといった成分が、大腸の粘膜のただれを治す効果があることに着目した。しかし、実際に科学的に検証した例がなかったため、国内の30の医療施設の協力を得て、どんな薬でも改善しなかった難治性の患者も含めて、臨床試験を行なった。86人の患者に、青黛を投与するグループと、プラセボ(偽薬)を投与するグループに分け、8週間にわたって経過を観察した。
その結果、プラセボを投与した患者は14%しか症状が改善しなかったのに、青黛を投与した患者は70~81%が改善した。また、青黛を投与する量が多いほど治療効果が上がることがわかった。