小田急電鉄は2017年12月5日、新型特急ロマンスカー「70000形」を大野総合車両所(相模原市)で報道陣にお披露目した。18年からの運行で、小田急がロマンスカーに新型車両を投入するのは08年の「60000形」(MSE)以来10年ぶり。
愛称は「GSE」(Graceful Super Express)で、18年3月中旬のダイヤ改定に合わせて運行を始める。ダイヤ改定では代々木上原~登戸間が複々線化され、ロマンスカーもスピードアップ。小田急にとっては悲願とも言える新宿-小田原間が最速で「1時間切り」を果たす。
展望車は網棚なくなり眺めが良くなる
現時点で車両の前と後ろに展望席があるロマンスカーは「50000形」(VSE)と「7000型」(LSE)2種類。箱根観光が人気でVSEの予約が取りにくくなっているのに加え、1980年デビューのLSEは老朽化が進んでいたため、GSEの製造が決まった。
車体外装は「バーミリオン」を基調にしており、これまでのロマンスカーと比べて眺めが良くなっているのが大きな特徴。VSEに比べて前面のガラスの高さは約30センチ高くなった。VSEでは高さ70センチだった展望車側面の窓も100センチまで大きくなった。座席下にスペースを多めにとったり、デッキに荷物置き場を置いたりした上で、座席上の荷物棚をなくして窓を大きくした。電源コンセントや車内の無線LAN(Wifi)も装備した。1編成(7両)あたり、VSEよりも42人多い400人が乗れ、18年度上旬までに計2編成が導入される。
ロマンスカーの運転士や車掌、アテンダントの制服も約12年ぶりにリニューアル。デザインは、日本航空(JAL)の女性用パイロットや、MKタクシーの運転手の制服デザインを手がけたことで知られるファッションデザイナーの小篠ゆまさんが担当した。
18年3月のダイヤ改定では、代々木上原~登戸間で複々線化が完了する。各駅停車と急行・特急が別々の線路を走れるため、増発やスピードアップができるようになる。国土交通省が17年7月に公表した16年度の混雑率データによると、首都圏の主要31区間中、小田急の世田谷代田-下北沢間はワースト3の192%。「体が触れあい、やや圧迫感のある状態」だ。これが複々線の完成で運転本数がピーク時で27本から36本に増やすことができ、混雑率も「新聞、雑誌を楽な姿勢で読むことができる状態」の150%程度にまで緩和される見通しだ。
小田急社長「もっとスピードは出せるが...」
ロマンスカーも複々線化の恩恵を受ける。平日朝は上りのロマンスカーが7本から11本に増え、土曜・休日は新宿から小田原や箱根湯本に向かうロマンスカーの所要時間も短縮される。小田原行きは5分短縮されて最速59分、箱根湯本行きは9分短縮されて最速で73分になる。
小田急の星野晃司社長は、
「今回の(車両の)スペックは、かなり居住性を意識している。ゆったり座れたり眺望が良いとか...。もっとスピードは出せるが、線路容量の問題があり、そういった中で新宿-小田原で1時間を切る59分を実現した」
と話した。