立憲民主党の枝野幸男代表が民主党時代に発表した憲法改正私案をめぐり、旧民主党のメンバー間で見解が割れている。
枝野氏は、私案は「集団的自衛権の行使を容認していません」と説明するが、希望の党の長島昭久政調会長は「???明らかに、容認しています。当時、私はそれを直ちに支持しました」と、異論を唱えている。「私案」からの変節は本当にないのか。
改憲私案「撤回」報道に反応
枝野氏は2017年12月2日、
「自身が民主党時代に公表し、集団的自衛権の行使容認を含む憲法改正私案について『有効ではない』と述べ、撤回した」
などと報じる日経新聞の記事をツイッターで引用し、
「私のかつての私案は集団的自衛権の行使を容認していません。記者の皆さんも聞いていた直前のテレビの収録で明確に説明しています」
と反論した。この書き込みに、長島氏が
「???明らかに、容認しています。当時、私はそれを直ちに支持しました。笑 容認してないのならば、なぜ今になって撤回するのでしょうか?一度自ら公開論文として提案したものなのですから、どの点で誤りに気付いたのか、考え方を変えたのか、きちんと説明する責任があると思うのですが如何」
とかみついた。
現行の憲法9条の次に「9条の2」「9条の3」追加
私案をめぐっては、17年11月5日には「これは明確に集団的自衛権です」というツイッター上の指摘に対して、枝野氏が
「日本を守るために日本が発動するのは個別的自衛権です。日本を守るために米軍が行動するのは、米国にとっては集団的自衛権の発動ですが、その米軍と共同行動をとっても、日本にとって集団的自衛権の行使になるわけではありません。この点の誤解をされている方は多いようです」
と反論したという経緯もある。
では、実際の条文はどうか。枝野氏の私案は文芸春秋2013年10月号に「改憲私案発表 憲法九条 私ならこう変える」と題して発表された。現行の憲法9条の次に「9条の2」「9条の3」を追加するというものだ。集団的自衛権に関係しそうなのが、「9条の2」の第1項と第2項で、それぞれ
「我が国に対して急迫不正の武力攻撃がなされ、これを排除するために他に適当な手段がない場合においては、必要最小限の範囲において、我が国単独で、あるいは国際法規に基づき我が国の平和と独立並びに我が国及び国民の安全を守るために行動する他国と共同して、自衛権を行使することができる」
「国際法規に基づき我が国の安全を守るために行動している他国の部隊に対して、急迫不正の武力攻撃がなされ、 これを排除するために他に適当な手段がなく、かつ、我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全に影響を及ぼすおそれがある場合においては、 必要最小限の範囲で、当該他国と共同して、自衛権を行使することができる」
という内容だ。いずれも「他国と共同して、自衛権を行使」の文言がある。
「自衛艦と共同行動中の米艦船」は「常識的には助けるべきでしょうが」...
当時の文芸春秋誌上での枝野氏の説明によると、08年に安倍晋三首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」が示した集団的自衛権の行使などを認める4類型のひとつ
「公海上で自衛艦と共同行動中の米艦船が攻撃された場合の反撃」
については
「常識的には助けるべきでしょうが、憲法にははっきりと書かれていません」
とした上で、「集団的自衛権行使の一部容認」と「個別的自衛権としてギリギリの限界」のいずれでも説明可能だとだとの見方を示した。そんな中で安倍首相が解釈改憲で問題を解決しようとすれば野党から「違憲」だと批判され日本の国益にも反すると指摘。その上で、
「だからこそ、こうした判断が微妙な限界事例について、不合理が生じないよう線引きをする必要があるのです、ただし、その他の大部分の集団的自衛権行使については、拡大解釈が生じないように明確に否定する。それこそが、何よりも強固な歯止めになるのではないでしょうか」
と主張した。「その他の大部分の集団的自衛権については明確に否定」という書きぶりからは、読み方によっては集団的自衛権行使を限定的に容認しているとも受け取れそうだ。
一切、この私案をめぐっては、共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が、13年9月10日付の記事で
「軍事力の保有、集団的自衛権の行使、国連のもとでの多国籍軍への参加を容認する重大な内容です」
と、「集団的自衛権の行使を容認」だと批判。長島氏もツイッターで赤旗の記事を引用しながら
「4年前に提起された枝野氏の9条改憲案が集団的自衛権の行使を容認したものであることは、明々白々です」
と主張した。