「勝負師」の顔から一転、「パパ」の顔へ――。日本長距離界の「救世主」といわれる男、大迫傑選手(26)(ナイキ・オレゴンプロジェクト)はお立ち台でレース後のインタビューを終えると、5歳の娘を満面の笑みで抱き寄せた。
レース中とまた違った彼の一面に、「競技に対してとは正反対で娘ちゃんにはデレデレの大迫さん好き」と釘付けになる視聴者も出たようだ。
日本歴代5位の2時間7分19秒
大迫にとって2017年12月3日の福岡国際マラソンは、20年東京五輪のマラソン代表選考会「グランドチャンピオンシップ(GC)」の出場権をかけたレースの1つで、国内初マラソンの舞台でもあった。17年4月のボストンマラソンで3位の好成績を収めて以来、日本長距離界の「救世主」的存在とみられるように。外国人の招待選手や公務員ランナーの川内優輝選手らとどう渡り合うか、その両脚に注目が集まった。
レースは序盤からゴール想定タイム2時間6分台のハイペースで進む。川内ら日本人選手が次々と脱落する中、大迫ただ1人が30キロ以降も4人の外国人ランナーと先頭集団を形成した。32キロ過ぎのペースアップで離されたが、最後までペースを崩さず、39キロ手前で1人を抜き返し3位に。日本歴代5位の2時間7分19秒でフィニッシュテープを切った。
「外国人選手と歩幅から何まで同じような走り」。大迫の日本人離れした走りを、解説席の谷口浩美氏はそう評価する。大迫は2015年、アメリカに練習拠点を移し、世界屈指のランニングチーム「ナイキ・オレゴンプロジェクト」にアジア人で初めて加入。同チームのモハメド・ファラー選手らトップクラスの選手しかできない、「フォアフット走法」(前足で着地する走り方)に磨きをかけた。
NHKなどの報道によると、大迫はレース後「これからも地味な練習を質を上げて繰り返すことでさらに記録が狙えると手応えを感じた」とコメント。他の日本人選手が日本の実業団で練習する中、これからもアメリカで「武者修行」を続ける。「(マラソンへの)覚悟がある」。青山学院大陸上競技部の原晋監督は、この日の解説席で大迫の印象をそう話した。
娘の手には、「パパ」と書かれたうちわ
大迫の鋭いまなざしは、レース後も変わらなかった。お立ち台のインタビューでは、「自己ベストが出て、非常にうれしい。もう少しトップ争いに入れたら良かった」とコメント。
「まだ東京五輪については考えていない。1つ1つ目の前の大会に集中したい」
と淡々とした表情で語った。
だが5歳の娘がお立ち台に上がると、緊張感からフッと解放されたようだ。大迫は両腕で娘を迎え入れ、満面の笑みでぎゅっと抱きしめた。そして2人で、報道カメラの写真撮影に応じた。
実況担当のアナウンサーは思わず、
「娘さんを今、抱きかかえて、レースの時とはうそのような、やわらかい表情にもなりました」
娘の手には、「パパ」と書かれたうちわが。この光景に、ツイッターなどインターネット上は
「大迫娘ちゃん来たらすっかりパパの顔。微笑ましい」
「競技に対してとは正反対で娘ちゃんにはデレデレの大迫さん好き」
「大迫くんが娘ちゃんの顔みてパパの顔に戻る瞬間グッときた」
「大迫くんの娘さん可愛い!パパって団扇持ってる」
といった声であふれ返った。