「そもそも待機児童を解消するのが...」
ただ、そもそも、無償化の前に、待機児童解消こそ優先すべきだという議論は少なくない。11月27日の衆院予算委でも自民党の田村憲久元厚労相までが「無償化はわかるが、そもそも待機児童を解消するのがまず始めだろうという意見が党内でもある」と指摘したほど。
政府は2020年度までに32万人分の保育の受け皿を進めるとして、安倍首相は「まずは受け皿づくりを先行させている」と釈明するが、計画通り整備しても待機児童は解消できないとみる関係者が多い。13年に安倍政権が策定した「待機児童解消加速化プラン」などでは自治体の予測した需要を積み上げ、目標を策定したが、保育所をつくると却って需要を喚起することになり、さらに受け皿が足りなくなるという「イタチごっこ」を繰り返している。今回の「32万人」も、17年6月までに自治体から集約して積み上げた数字。日経新聞の都市部162自治体に関する調査では、待機児童ゼロを達成可能との回答は半数にとどまり、さらに整備目標の上積みが必要という自治体が続出している(11月28日朝刊)。野村総研は5月、必要な保育整備は88万6000人分との試算を公表しており、「32万人の目標は、早晩、上積みが必要になる」と自治体関係者は指摘する。
そのためには、さらに財源が必要になり、「選挙で『無償化』というバラマキを公約したことで、肝心の保育所整備の予算確保が難しくなるジレンマに陥った」(全国紙政治部デスク)格好だ。