利便性と返却場所と制度設計
セブンがシェア自転車サービスを拡大するのは、来店者を増やす狙いがある。裏返せばドラッグストアに押されてコンビニの来店者が減っているという事情がある。コンビニの業界団体、日本フランチャイズチェーン協会によると、全国のコンビニの既存店の来店客数は10月まで20か月連続で前年を下回っている。セブンも10月まで4か月連続前年割れだ。コンビニの雄としてセブンが続けてきた既存店売上高の増収記録も2017年10月、悪天候の影響もあったが62か月で途絶えた。ファミリーマートは全国でじわじわと利用者が増えているコインランドリーの併設に乗り出すが、セブンが取った策はシェア自転車のサービス拡大というわけだ。実際、ドコモと組んでシェア自転車を置いた店舗の来店客数が、それ以外の近隣店舗に比べて2%程度多いという。
セブン以外にも普及に向けた動きは起きている。中国のシェア自転車大手「モバイク」が8月に日本市場に参入した。まず札幌市でサービスを開始し、福岡市など10都市程度に広げる計画だ。モバイクとともに「中国2強」の「オッフォ」も日本進出を計画しているとされる。フリーマーケットサイトを運営するメルカリも「メルチャリ」の名称で来18年から事業を始めたいと表明している。
自治体が牽引車となって地域で進める例もあり、仙台市や横浜市など全国80以上に及ぶとされる。今後の導入を検討している都市も多い。例えば千葉市は2018年3月から1年間、実証実験を始める。JR千葉駅とJR海浜幕張駅を中心とする2地域で実施し、その結果を踏まえて19年10月以降に本格導入する方針だ。千葉市は過去にも挑戦し、遠方での乗り捨てなどが頻発して15年に撤退に追い込まれたが、機は熟したとして再挑戦する。
供給側の動きは急だが、もくろみ通りにシェア自転車が広がるには、消費者が利便性を感じられる仕組みにする必要がある。中国で一気に普及したのは、自転車に全地球測位システム(GPS)装置を付けて消費者も「空き自転車」の置き場所を把握できるようにしただけでなく、「どこでも乗り捨て可能」とした便利さに消費者が飛びついたからだ。しかし、私有地など街中での放置が後をたたず、社会問題化しているのが現状で、今なお決定的な解決方法を欠いているようだ。日本では基本的に返却場所はあらかじめ決めているが、返却場所を十分確保しなければ利便性に乏しくなり、何のために自転車を借りたのか分からなくなる。この辺りの制度設計が本格普及のカギを握りそうだ。