加熱タバコを幼児が飲み込む事故が急増 紙巻きより「安全」「副流煙なし」がアダに

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   ここ数年、タバコ葉に火をつけずに、電気的にヒーターで加熱して吸う「加熱タバコ」が人気になっているが、幼児がタバコ葉を詰めたスティックやカプセルを飲み込む事故が多発しているため、2017年11月16日、国民生活センターが注意を呼びかけた。

   紙巻タバコと違って副流煙が出ない利点がアダになり、家の中で吸う親が多いからだ。日本小児科学会もウェブサイトで、子どもが誤飲しやすい点で「紙巻きタバコ以上に危険」と警告している。

  • 左の紙巻タバコに比べ、右の加熱式タバコは小さくて幼児が飲み込みやすい(カプセルが幼児の口の大きさ。国民生活センターの発表資料より)
    左の紙巻タバコに比べ、右の加熱式タバコは小さくて幼児が飲み込みやすい(カプセルが幼児の口の大きさ。国民生活センターの発表資料より)
  • 左の紙巻タバコに比べ、右の加熱式タバコは小さくて幼児が飲み込みやすい(カプセルが幼児の口の大きさ。国民生活センターの発表資料より)

子どもが青い顔をしながらモグモグかんでいた

   国民生活センターの発表資料によると、2016年4月以降に10件の誤飲事故が医療機関を通じて報告されているが、すべてが1歳5か月未満の乳幼児だった。主な事例は次のとおりだ。

   【事例1】9か月の男児の父親は、男児の誕生を機に受動喫煙をなくそうと、紙巻きタバコから加熱タバコに変えた。事故発生時、男児の手が届くテレビ台の上に加熱式タバコのスティックの入った箱が、封の開いた状態で置いてあった。男児は顔を青ざめながら口をモグモグさせていた。母親が口をこじあけると、スティックのフィルターだけが口の中に残った状態で、スティック一本すべてのタバコ葉を食べたと思われた。すぐに救急外来を受診した。担当医は輸液を開始し、生理食塩水で胃洗浄を行った。翌日に退院した。

   【事例2】朝、母親が目を覚ました時、11か月男児が起きていて、口をクチャクチャさせていた。周囲にかみちぎったスティックが2本分落ちていた。すぐに口の中のものをかき出し、救急外来を受診した。スティックは父親のもので、50センチの高さの棚の上に置いてあった。口の中からタバコ葉の塊が約8センチほど出てきた。幸い、血圧、心拍数などに異常はなかった。

   国民生活センターでは、保護者に次のように呼びかけている。

   (1)加熱たばこの使用前の1本分のタバコ葉中には、中毒症状が現れるおそれのある量に十分なニコチンが含まれている。使用前後のタバコ葉の入ったスティック等は、乳幼児の手が届かない場所に保管・廃棄する。
(2)乳幼児が加熱タバコのスティック等を誤飲した場合には、水や牛乳などを飲ませず、直ちに医療機関を受診する。

   そして、加熱タバコの製造販売メーカーに「乳幼児が容易にタバコ葉の入ったスティック等を取り出せないよう外箱の構造を改善する。また、スティック等の誤飲を防止するため、商品パッケージやホームページなどに、保管・廃棄には十分に注意するよう啓発すること」を要望した。

加熱タバコのスティックは、小さくて幼児が飲み込みやすい

   一方、日本小児科学会も2017年2月、幼児の誤飲事故の事例をウェブサイト「Injury Alert」(傷害速報)に公表した。「傷害速報」は子どもの安全を脅かす事故について、保護者や医師に注意喚起するものだ。そして事例解説のコメント欄に、「加熱式タバコが紙巻タバコ以上に危険である」ことをこう指摘している(要約抜粋)。

   (1)加熱タバコのスティックには、紙巻タバコと同様にフィルターが付いているが、長さが約2.5センチと紙巻タバコの半分で、幼児が一口で口の中に入れられる大きさになっている。
(2)加熱タバコの有害物質は、紙巻タバコより少ないとされているが、ホルムアルデヒドなどの有害物質が含まれているという研究もある。また、スティックに含まれるニコチン量に表示義務がないことも問題だ。米国では、2歳未満の幼児がスティックを飲みこんだ場合、紙巻タバコを誤飲したケースより重篤になるという報告がある。
(3)加熱タバコメーカーが「副流煙が出ない」と強調しているため、今後、幼児がいる家庭でも使用者が増える可能性がある。

   火を使わない「安全性」が子どもの危険を招く結果を招いている。

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