指導力のあるO型、しっかり者のA型、チャラケたB型...。かつて血液型の性格判断がはやったが、すっかり「えせ科学」扱いに。最近は、本物の科学から血液型によって病気になりやすいタイプ、なりにくいタイプがわかってきた。
2017年11月14日に開かれた米国心臓協会学術集会でも、心臓発作を起こすリスクはO型が少なく、A型、B型、AB型が高いという研究結果が報告された。過去の研究でも、がん、認知症、糖尿病など多くの病気で「O型有利」の結果が出ている。いったい、どうしてだろうか。
大気汚染で発作を起こす心臓病患者の血液型を調べると
研究を発表したのは、米ユタ州のインターマウンテン医療センター心臓研究所のチームだ。同医療センターのプレスリリースによると、大気汚染と心臓発作の関連を調べるため、1993~2007年の14年間に同センターに通院・入院した心臓病患者のデータを使った。
大気汚染と心臓発作の関係では、PM2.5の濃度が1立方メートルあたり25マイクログラムの汚染レベルを超えると、心臓発作のリスクが高まることがわかっている。そこで、研究チームはこの濃度を危険レベル(公害)として、危険レベルを超えた日やその数日後以内に心臓発作や胸の痛みを訴えた患者のデータから、血液型と発作リスクの関係を調べた。
その結果、次のことがわかった。
(1)A型、B型、AB型の人は、大気汚染が危険レベルに達した際、心臓発作や胸の痛みを訴えるリスクが、汚染レベルが低い場合に比べ、約2倍に高まる。しかし、O型の人は1.4倍にしか高まらない。
(2)A型、B型、AB型の人は、PM2.5濃度が危険レベルを超えると、1立方メートルあたり10マイクログラム上昇するごとに、心臓発作などのリスクが25%ずつ上昇する。しかし、O型の人は10%ずつしか上昇しない。
なぜ、血液型によって心臓発作のリスクが異なるのかは、報告の中では明らかにしていない。研究チームリーダーのベンジャミン・ホーン博士は、プレスリリースの中でこう語っている。
「危険レベルの大気汚染でもO型の人のリスクは少ないものでした。かといって、O型以外の人は、決してパニックを起こす必要はありませんが、危険性は認識しておくべきです。心臓や血管に病気がある人は、公害にさらされない室内ですごすことが大切です」
熱帯地域にO型が多いのはマラリアにかかりにくいから
それにしても、なぜO型の人が病気に強いのか。「血液型と病気の発症リスク」との関連を調べた研究は多くあり、ほとんどが「O型有利」の結果になっている。以下、主な病気との関係を列挙しよう(カッコ内は論文発表年と研究機関)。
(1)すい臓がん:約10万人を約8年間追跡調査。期間中に発症したすい臓がんの人々を、飲酒、喫煙、年齢、遺伝など他の要素を除外したうえで、血液型との関連を分析すると、O型の発症リスクが一番低かった。他の血液型のなりやすさはO型に比べ、B型は約1.7倍、AB型は約1.5倍、A型は約1.3倍だった(2009年・米国立がん研究所)。
(2)心臓病:約9万人を約20年間追跡。心筋梗塞や狭心症の発症リスクはO型が一番低かった。O型に比べ、他の血液型の発症リスクはAB型が20%増、B型が11%増、A型が8%増だった(2012年・米ハーバード大学)。
(3)心臓病と胃がん:すべての病気の死亡率との関連を調べるため約5万人を約7年間追跡。特に心臓病で差が大きく、O型は他の血液型に比べ、心臓病で死ぬリスクが15%低い。また総死亡率(早死にするリスク)が9%低い。がん発症率では、胃がんの差が顕著で、O型は他の血液型よりも55%低い(2015年・米国立衛生健康研究所)。
(4)前立腺がん:前立腺除去手術を受けた前立腺がん患者555人を約4年間追跡調査。再発するリスクはO型が一番低く、一番高いA型に比べ35%低かった(2014年・東京医科大学)。
(5)糖尿病:約6万人を約18年間追跡調査。糖尿病発症率はO型が一番低い。O型に比べ、他の血液型の発症リスクはB型が21%増、AB型が17%増、A型が10%増だった(2014年・フランス国立保健医学研究所)。
(6)認知症:約3万人を約3年半追跡。軽度認知症を発症するリスクはAB型が特に高く、他のO・A・B型の平均に比べ、82%増。他の3つの型の間では目立った差はなかった(2014年・米バーモント大学)。
(7)肺塞栓症(エコノミークラス症候群):約1360万人の献血者を調査した結果、O型に比べ、A・B・AB型の肺塞栓症の発症率は1.8倍高かった(2016年・スウェーデン・カロリンスカ研究所)。
(8)マラリア:血液型分布は国によって異なり、アフリカ、東南アジア、中南米など熱帯地域は圧倒的にO型が多い。マラリアの脅威のある地域で、O型がマラリアにかかりにくいためだ。マラリア原虫が「RIFIN」というタンパク質を分泌、これが赤血球の表面に付着し接着剤の役目を果たし、病気を広める。「RIFIN」はA型の赤血球の表面には強く結合するが、O型とは結合が弱いため、熱帯地域にO型の人が多く生き残った(2015年・スウェーデン・カロリンスカ研究所)。
O型は人類の祖先のたくましい免疫力を残している
以上の結果をみると、O型ばかり得をしているように思われるが、なぜ病気の発症と血液型が関係してくるのか。免疫学者の藤田紘一郎・東京医科歯科大学名誉教授の著作『血液型の科学』などによると、こういうことのようだ。
もともと血液型によって免疫力が違う。ウイルスや細菌と戦う抗体はリンパ球で作られるが、白血球の中のリンパ球の割合が血液型によって異なる。O型39%、B型37%、A型36%、AB型34%。つまり、O型が最も病気に対する抵抗力が強く、AB型が最も弱い。これは進化の過程で血液型が分かれてきたためだ。人間の先祖は最初O型だった。やがて農耕・牧畜生活に入り、穀物や乳製品を食べるようになると、それらを消化するため腸内細菌が変化し、A型、B型、最後にAB型が現れた。O型は人間の「基本形」だけに、何でも食べた頃のたくましい免疫力を残している。
また最近、血液型を決める遺伝子は、血中コレステロールを調整する遺伝子と同じ染色体上にあることが判明。特にO型の場合は、血液型をOに決める酵素が、同時に心筋梗塞を予防する働きに関連している。一方、A型は悪玉コレステロール値が高くなり、AB型は心筋梗塞につながる血管の炎症になりやすいことがわかってきた。もともと、O型は「血液サラサラ」に、A型、AB型は「血液ドロドロ」になりやすい傾向があるわけだ。
とはいえ、自分の血液型を単純に喜んだり、ガッカリしたりするのは禁物。上記の(2)で研究を行なったハーバード大学のルー・チー博士は同大のプレスリリースでこうコメントしている。
「自分の血液型のリスクが高いことを知ると、病気予防に留意するきっかけになります。血液型が何型であろうと、喫煙、肥満、運動不足、高コレステロールなどの悪い生活習慣より危険な因子はありません。自分の血液型を変えることはできませんが、生活スタイルは変えることができます」