大相撲の横綱・日馬富士が暴行事件の責任を取る形で引退を表明したが、その会見の場で、「被害者」である平幕・貴ノ岩に対して明確に直接の謝罪をすることはなかった。
「お詫び」「申し訳ない」といった言葉はあったが、その相手は「国民」「伊勢ヶ浜部屋の後援会」「親方・おかみさん」「力士の仲間たち」などだった。
「弟弟子を思って叱った」
日馬富士は2017年11月29日に福岡で会見を開き、「この度、貴ノ岩関にケガを負わせたことに対し、横綱としての責任を感じ、本日をもって引退をさせていただきます」と表明。続く「謝罪」の言葉はこうだった。
「国民の皆さま、相撲ファンの皆さま、相撲協会、伊勢ヶ浜部屋の後援会の皆さま、親方・おかみさんに、大変迷惑をかけたこと、心から深くお詫び申し上げます」
報道陣からの質疑応答の中では、「この場を通じて、一緒に戦ってきた力士の仲間たちに本当に申し訳ないと伝えたいです」と、広く「力士の仲間たち」に謝罪。
「一連の事件で何があったのか?」と聞かれると、
「先輩横綱として、弟弟子の礼儀礼節がなっていないのを正し、直し、教えてあげるのが先輩としての義務だと思っています。弟弟子を思って叱ったことが、彼を傷つけ、そして大変世間を騒がせ、相撲ファン、相撲協会、後援会の皆さまに大変迷惑をかけることになってしまいました」
と、相手を思ってのことだったとしている。
直球で「いま、貴ノ岩関に思うことは?」と質問が出ると、日馬富士は「貴ノ岩関にケガを負わせて、心もたぶん傷付けていると思います」としたが、続けて
「これから、礼儀と礼節を忘れず、ちゃんとした生き方をして頑張っていただきたいです」
と助言するのみで謝罪の言葉はなかった。