横綱・日馬富士の平幕・貴ノ岩への暴行問題が発覚してから、「東京相撲記者クラブ会友」の肩書を持つ識者をほぼ毎日テレビで見る。
その発言は、見識に裏打ちされた膝を打つものがある一方、インターネット上では日本相撲協会側に寄りすぎているのでは?と揶揄されることも少なくない。
「お医者さんが公に仰っていただいても、ちっともおかしくないと思う」
東京相撲記者クラブ会友の杉山邦博氏(87)は2017年11月27日の「ひるおび!」(TBS系)で、貴ノ岩が暴行を受けた後で病院にかかったことから、
「お医者さんが具体的に『こういう裂傷だったからこんな措置をした、何針縫った。こういう感じでやりました』と公に仰っていただいても、ちっともおかしくないと思うんですが。そういう話が出て来ないのは何とも言いようがありません」
と怪訝な表情で話した。だが、直後に弁護士の八代英輝氏が「お医者さんとしては、患者さんのプライバシーに関することなので、患者さんの許可がなければ治療内容を取材で話すのは難しいと思います」と指摘。杉山氏は「そうですか。困ったねえ」と不意をつかれたようだった。
同会友の大見信昭氏(74)は15日の「スッキリ」(日本テレビ系)で、
「ご覧の通り貴ノ岩はいかつい顔をしておりまして、説教しがいのある表情をしている」
と発言。日馬富士についても「日本国籍を取得していない。モンゴル国籍で、引退したら親方になれず相撲界から出ていく。どこか腰かけ的な軽い思い」などと述べ、ツイッターで「偏見」「頓珍漢」などと批判が出た。
「やろうとしているのは改革ではなく『革命』ですよ」
暴行問題では、日本相撲協会執行部と、貴ノ岩の師匠・貴乃花親方との軋轢もクローズアップされているが、同会友らの言葉をめぐってはツイッターで「相撲協会寄りな意見にしか聞こえない」といった声も少なくなく、総じて貴乃花親方に否定的との指摘がある。
同会友の原和男氏は22日の「深層NEWS」(BS日テレ)で、「改革派」とも言われる貴乃花親方について
「改革する内容について、どれだけ自分が実務的に協会の組織で体験したか。残念ながら体験の日数も種目もごくわずかしかない。それで一体なぜ、本格的な問題点を改革しようと言えるのか、不思議ですよ」
と疑問を呈した。
「そういったものを表沙汰にするきっかけを貴乃花が作った、とすれば協会は揺さぶられますよ。でも揺さぶられながら、良い方向への体質改善も進むだろうという別の期待感も出た」と加えたが、「自分の弟子(貴ノ岩)の当事者に(協会危機管理委員会の聴取に)応じさせないのは、どう考えたってあり得ないし損な話です」とやはり貴乃花親方を批判した。
27日の「スッキリ」(日本テレビ系)には同会友の銅谷志朗氏(73)が出演。「貴乃花親方にはポリシーがある。これが執行部と合わないことはあるかもしれません。今の執行部は伝統を守らないといけない。伝統を守るために改革もしないといけない」とした上で、
「貴乃花親方も『改革』とよく言っています。でも今やろうとしているのは改革ではなく『革命』ですよ。そうでしょう。相撲協会という組織を飛び越えてやっています」
と、その行動を批判した。
「協会に報告すると『うやむやになる』んですか?」
意味深に話を逸らすようなシーンも見られる。28日の「スッキリ」(日本テレビ系)では、貴乃花部屋支援者が親方と電話したとして、親方には「相撲協会に報告すると暴力問題がうやむやになる」との思いがあると明かした。司会の加藤浩次さんが「協会に報告すると『うやむやになる』んですか?」と聞くと、同会友の山崎正氏(73)は、
「今までそういう傾向が強かったということ」
と返答。「過去、うやむやになったことがあったのを貴乃花親方は知っているから、こういう行動に出ていると?」と聞かれると、「そういうことですね」とだけ答えた。
暴行の解明についても、山崎氏は番組で「どこまで追及できるかは限界があると思います。危機管理委員会も、日馬富士が本当のことを言ったとしても、何かその辺ではっきり言えないものもあるんじゃないかな」と、どこか言葉を濁した。加藤さんは「なぜはっきり言えないんですか」と尋ねたが、山崎氏は
「その辺を言ってしまうと、すべて分かってしまうというか。すべて分かってしまうということがある程度、白鵬、鶴竜、日馬富士にもあるのではないかと思うんですよね」
「日馬富士や白鵬にとっては、それがひとつの痛手になるという思惑がまだ頭の中にあるのではないかと思うんです」
と歯切れが悪かった。
一体「東京相撲記者クラブ」とはどういう団体なのか。スポーツジャーナリストの菅谷齊氏は「『東京運動記者クラブ』の中でも、ずっと大相撲を担当して取材経験の長い人たちでつくられているのが『東京相撲記者クラブ』です。相撲専門の独自の組織ですね」と話す。「協会寄りの発言が多い」との印象を与えがちだが、「『お得意様』を悪くは言えないでしょう。毎日相撲の取材をしているんです。よく会っていれば話もしやすくなり、歳を取るほど関係も築かれます」と言う。一方、会友らの発言について「彼らは中身をちゃんと聞いてわかった上で話をしています。しかし貴乃花親方はここまで口を開いていないので、援護のしようがない」と話していた。