インフルエンザの本格的な流行シーズンを前に、インフルエンザにかかって急に走りだしたり、高い所から飛び降りたりする「異常行動」が後を絶たないため、厚生労働省は2017年11月22日、ドアや窓を施錠するなどの対策を促す新たな通知を都道府県に出すことを決めた。共同通信や毎日新聞など大手メディアが報じた。
昨シーズンは子どもを中心に54件の異常行動が報告された。治療薬の種類や服用の有無にかかわらず起きており、流行入りを前に同省は「対策を徹底して事故を防いで」と呼びかけている。
自宅で寝ていたはずの中学生がマンションから飛び降り
報道によると、従来の通知は「インフルエンザ発症後2日間は子どもを一人にしないよう保護者は注意深く見守ってほしい」というものだった。新しい通知では専門家の進言を受け、(1)窓や玄関に施錠する(2)窓に補助錠を取り付け、子どもが開けられないようにする(3)一戸建ての場合は1階に寝かせる――など、より具体的に、かつ強く注意を促す内容になっている。
インフルエンザの異常行動による死亡事故では、2017年2月14日、東京都品川区のマンションで、中学2年の男子生徒(14歳)が転落死したケースがある。NHKなど2月15日付報道によると、男子生徒はインフルエンザとの診断を受け、治療薬「リレンザ」を服用し、自宅で休んでいた。母親が留守中にいなくなったため、警察に捜索願を出していた。1人でマンションの高い階に上がり、飛び降りたとみられる。
インフルエンザの治療薬には、リレンザのほかにタミフル、イナビルなどがあるが、いずれも服用後に未成年が「異常行動」をとる例が報告されている。特に、タミフルは2005年~2006年にマンションのベランダから飛び降りて死亡する事件が相次ぎ、社会問題になった。厚生労働省の研究班などが薬との因果関係を調べたが、原因はわからなかった。
「興奮して部屋中駆け回る」「ベランダに出ようとする」
厚生労働省のウェブサイト「インフルエンザQ&A」を見ると、インフルエンザ薬の服用後の「異常行動」について次のような例が紹介されている。
(1)突然立ち上がって部屋から出ようとする。
(2)興奮状態となり、手を広げて部屋を駆け回り、意味のわからないことを言う。
(3)興奮して窓を開けてベランダに出ようとする。
(4)自宅から外に出て歩き、話しかけても反応しない。
(5)人に襲われる感覚を覚え、外に飛び出す。
(6)変なことを言い出し、泣きながら部屋の中を動き回る。
(7)突然笑い出し、階段を駆け上がろうとする。
恐ろしくなる話だが、どのくらいの頻度で「異常行動」が起こるのか。2016年1月に厚労省研究班がまとめた「抗インフルエンザウイルス薬の安全性について」によると、2014~2015年シーズンの「薬による異常な行動と死亡症例報告数」は、以下のとおりだった(カッコ内は薬を使用した推定患者数)。
(1)タミフル:異常行動24件・死者5人(約288万人)。
(2)リレンザ:異常行動3件・死者0人(約137万人)。
(3)イナビル:異常行動5件・死者1人(約380万人)。
(4)ラピアクタ:異常行動0件・死者2人(約21万人)。
しかも最近では、薬を服用しなくても「異常行動」をとるケースが報告されている。数百万~数十万人に数件とはいえ、インフルエンザにかかった子どもには十分注意してあげたい。