3メガバンクが店舗統廃合や人員スリム化などの大規模な構造改革を相次いで発表した。超低金利や人口減少で収益環境が悪化し、高コスト体質の改善が待ったなしの状況になっているためだ。20年前の金融危機後、経営統合を経て誕生したメガバンクは、再び大きな転換点を迎えている。
「厳しい外部環境の下、コスト競争力の強化が急務になっている」。みずほフィナンシャルグループ(FG)の佐藤康博社長は2017年11月13日の中間決算発表会見でこう強調した。
IT活用による業務省力化で従業員数を削減
この日発表した構造改革では、IT活用による業務省力化により、グループ全体で7万9000人いる従業員を10年間で1万9000人減らし、6万人体制にする。現在、約500ある国内拠点も2024年度末までに約400に減らすとした。
三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長も、11月21日の投資家向け説明会で、傘下の三菱東京UFJ銀行の従業員数が、現在の4万人強から2023年度末までに6000人程度減るとの見通しを明らかにした。三井住友FGも、IT活用によって2019年度末までに約4000人分の業務を削減する計画だ。
3メガが競い合うように構造改革計画を発表しているのは、収益環境の悪化が背景にある。日銀のマイナス金利政策で貸し出し金利が一段と落ち込み、人口減少にも歯止めがかからない中、本業の融資によるもうけを拡大するのは難しい。
収益が伸び悩む一方で、全国の駅前の一等地に支店網を張り巡らせているメガバンクの賃料や人件費は大きく減っておらず、3メガの2017年9月中間連結決算は、本業のもうけを示す業務純益の合計が前年同期比約3割減った。
「フィンテック」への対応
さらに、ITを駆使した新たな金融サービス「フィンテック」の分野に、IT企業など銀行以外の企業が相次いで参入していることもメガバンクの危機感を強めている。送金や決済はこれまで銀行の独壇場だったが、スマートフォンで手軽に行えるようになってきている。人手と時間がかかり、手数料も相対的に高い銀行窓口の決済・送金サービスは、もはや時代遅れになりつつあり、このままでは新規参入組に顧客を奪われかねない。
とりわけ、危機感が強いのは、みずほだ。日本興業、富士、第一勧業の旧3行が経営統合したみずほは、店舗数が多く利益に占める経費の割合も高い。2017年9月中間連結決算では、3メガのうち、みずほだけが最終減益となり、他の大手行幹部は「投資家向けに、1万9000人の人員削減という踏み込んだ数字をアピールせざるを得なかったのだろう」と推測する。
3メガはいずれも早期退職の実施などは行わず、バブル期に大量採用した行員の退職増加や、新規採用の抑制による自然減でスリム化を実現する方針だ。省力化の一方で、フィンテックへの投資を加速したり、資産運用などの相談業務を充実させたりして収益増を目指す。だが、メガバンク内では、支店数の削減方針に「支店長ポストが減る」などと不満がくすぶり始めているという。
奇しくも2017年11月は山一証券や北海道拓殖銀行が破綻した金融危機からちょうど20年。大手行は厳しいリストラを経て再生したはずだったが、20年がたった今も、高コスト・低収益体質は変わっていない。古いビジネスモデルを大転換しなければ、今回打ち出した構造改革は単なる縮小均衡に陥る懸念もある。