「フィンテック」への対応
さらに、ITを駆使した新たな金融サービス「フィンテック」の分野に、IT企業など銀行以外の企業が相次いで参入していることもメガバンクの危機感を強めている。送金や決済はこれまで銀行の独壇場だったが、スマートフォンで手軽に行えるようになってきている。人手と時間がかかり、手数料も相対的に高い銀行窓口の決済・送金サービスは、もはや時代遅れになりつつあり、このままでは新規参入組に顧客を奪われかねない。
とりわけ、危機感が強いのは、みずほだ。日本興業、富士、第一勧業の旧3行が経営統合したみずほは、店舗数が多く利益に占める経費の割合も高い。2017年9月中間連結決算では、3メガのうち、みずほだけが最終減益となり、他の大手行幹部は「投資家向けに、1万9000人の人員削減という踏み込んだ数字をアピールせざるを得なかったのだろう」と推測する。
3メガはいずれも早期退職の実施などは行わず、バブル期に大量採用した行員の退職増加や、新規採用の抑制による自然減でスリム化を実現する方針だ。省力化の一方で、フィンテックへの投資を加速したり、資産運用などの相談業務を充実させたりして収益増を目指す。だが、メガバンク内では、支店数の削減方針に「支店長ポストが減る」などと不満がくすぶり始めているという。
奇しくも2017年11月は山一証券や北海道拓殖銀行が破綻した金融危機からちょうど20年。大手行は厳しいリストラを経て再生したはずだったが、20年がたった今も、高コスト・低収益体質は変わっていない。古いビジネスモデルを大転換しなければ、今回打ち出した構造改革は単なる縮小均衡に陥る懸念もある。