衆院選から1カ月、自民党議員の発言が立て続けに物議をかもしている。今度は前地方創生担当相の山本幸三衆院議員が、同僚議員のアフリカ支援活動について「なんであんな黒いのが好きなんだ」と2017年11月23日発言したことが、各メディアに一斉に報じられた。
就任以来、安倍晋三首相は日本の首相として8年ぶりとなる本格的な訪問を行うなど、アフリカ各国を重視する姿勢を示している。政権としても頭が痛い放言だ。
「なんであんな黒いのが好きなんだ」
報道を総合すれば山本氏は23日、「日本・アフリカ連合(AU)友好議員連盟」会長代行を務めるなど、アフリカとの交流活動を続ける三原朝彦衆院議員の会合に出席、その中で三原氏の熱心さに、「なんであんな黒いのが好きなんだ」と言及した。
25日、新聞各紙がこの発言を伝えると、この日のうちに撤回したものの、「黒人差別とも受け取られかねない発言」(産経ニュース)として野党からは、
「またも自民党から差別発言。差別発言をしている自覚がないのだろうか。言い訳せずに撤回、謝罪すべきだ」(立憲民主党・尾辻かな子衆院議員)
「人種差別的な価値観、発想で内心が満ち満ちているから、こうした暴言がごく自然に出てくるのだろう。欧米なら一切の釈明も許されず即刻、議員辞職だ」(民進党・小西洋之参院議員)
「『学芸員はがん』発言も。『加計ありき』で国家戦略特区指定も。何でこんなひどいのが国会議員を」(共産党・小池晃参院議員)
など、批判が相次いでいる(いずれもツイッターより)。アルピニストの野口健さんも25日、「この方の感覚はどん底にズレている」と厳しくツイートした。
アフリカは「インド太平洋戦略」にも関係
身内の政府・与党、特に安倍首相にとっても、歓迎しがたい発言だ。
安倍首相は2014年1月、オマーン・コートジボワール・モザンビーク・エチオピアを歴訪した。日本の首相による本格的なアフリカ訪問としては8年ぶりとなるこの外遊で、首相は各国首脳と相次ぎ会談、「アフリカが真のパートナーとして選ぶべきは日本であること」(外務省)を訴え、「今後必要なら何度でもアフリカを訪ねたい」とまでアピールしている。実際に2016年8月にはケニアで開催された第6回アフリカ開発会議に出席、共同議長を務め、3年間で総額約300億ドル(約3兆円)規模の大型投資を表明した。
背景には、近年アフリカへの進出を強める中国への牽制(けんせい)がある。2017年11月の日米首脳会談で取り上げられた「インド太平洋戦略」も、そもそもは上記のアフリカ開発会議で安倍首相が提唱した構想で、東はアジア、西はアフリカに及ぶ地域を結び、連携を強めることを目指している。首相は開発会議での演説を、こう締めくくった。
「未来は、明るい色彩に満ちています。激しくも心地よい、太鼓のビートが聞こえてくるようです。アフリカの友人たち、皆さま、これからも、未来の可能性を信じ、一緒に歩いてまいりましょう」(外務省ウェブサイトより)
山本氏は地方創生相在任中の4月にも、「学芸員はがん」などと発言して批判を浴び、撤回して謝罪している。