文字を書くのが勉強の妨げに
ピタくん(中3)は、自閉スペクトラム症と学習障害の特性がある。
学校から帰るとパソコンに向かい、塾に行くまでの間、学校の授業の復習をする。ピタくんにとっては、パソコンがノートと鉛筆の代わりだ。一度勉強し始めると周囲の声が耳に入らないほど集中するが、かつては想像もできなかった姿だ。
ピタくんの学習障害の特性が目立ち出したのは小学校に入学してから。文字は読めるが書くのが極めて困難で、計算問題は頭の中で答えがわかっても、筆算が書けず答えられない。ピタくんにとって、文字を書くのが勉強の妨げだった。
ピタくん「書いてると考えられなくなっちゃう。長い時間とか、多い量の字を書くと、頭の中でパニックになって思考が停止しちゃう」
小学5年の時、障害がある子供向けの講座で、タブレット端末のキーボード機能を使えば書きたいことが文字にできるとわかった。
これで学校でも勉強できると思ったが、他の子からずるいと思われるのでは、と心配した。1年悩んだ末、自分の学習障害についてと、タブレット端末があれば勉強ができるとクラスメートに説明した。先生も同じように困っている子がいたら使っていいと話し、クラスのみんなは理解してくれた。書く苦しみから解放され、勉強がどんどん楽しくなった。
中学に入ってからは、毎日ノートパソコンを持ち込んで授業を受けている。テストの時は、あらかじめ解答用紙をパソコンに取り込み、キーボードで答えを打つ。試験中は先生が付き添い、不正がないと他の生徒に理解してもらう。テストが終わると、入力した回答をプリントアウトして提出する。
クラスメート「ずるいとかは思わない。特別扱いとは全く感じないです」「ちょっと(パソコンを)使ってるだけで、別にそんなに変わりはないかなって」
学ぶ手段を得たピタくんは、今のびのびと過ごしている。モチベーションが上がり、進んで手で文字を書くようにもなった。パソコンを使い始めた頃よりも格段に上達しているという。
ピタくん「勉強が前より好きになった。自分を否定的に思ってたけど、そこまで悪くないんじゃないかなって」