シェールとのシーソーゲーム
半面、イエメンやレバノンを巡るイランとの対立激化など対外的な混乱が続く恐れもあり、それは原油相場押し上げ要因だが、サウジ・イランの対立がOPECの結束を乱して協調減産が崩壊すれば、原油価格は支えを失って急落する可能性も否定できない。
さらに、今後の動向をみるうえで目を離せないのがシェールオイルの動向だ。
技術革新で、従来は採掘困難だった頁岩(シェール)に含まれる石油を採れるようになったものがシェールオイルで、米国を中心に開発が進み、今や米国は世界最大の産油国に復活を遂げている。この「シェール革命」を受け、近年の原油相場は、価格が上がってくるとシェールオイルの生産が増えて需給が緩んで価格が値下がりに転じ、そうなるとシェールオイルは採算割れして生産が減少し、需給が締まり、そうなるとまた反転上昇に転じる......という動きが続いている。
この間、シェールオイルの生産コストが趨勢として低下を続けているが、大まかに言って、2014年末からの過去3年を見ると、概ね、1バレル=30ドル~60ドル程度のボックス圏での動きになっている。50ドルの水準になってくるとシェールオイルの生産が増えて価格の頭を押さえ、40ドルを割り込むとシェールオイルの生産が落ち込んで相場が反転して上昇する、という構図だ。直近の動きでは、この間の原油相場上昇を受け、米国の石油掘削装置(リグ)の稼働数が増加していると伝えられる。
ただ、ここにきて原油相場が60ドルに近付いていることから、上値が重くなってきているのは事実。近年のシェールオイルをにらんだ需給の傾向に合わせた動きに加え、サウジを中心とする中東の地政学的なリスクがどこまで広がるかが、当面の相場に大きく影響しそうだ。