「おじいちゃんやおばあちゃんが甘やかして子どもにお菓子ばかり食べさせる」といった保護者の愚痴を聞くことがある。
実際にそうした行為は子供の健康にネガティブな影響を与えているのか、英グラスゴー大学やエジンバラ大学、スターリング大学の研究者らが行った調査結果が2017年11月14日に発表された。
その結果は、「子どもの食事内容や体重に悪影響を与えている」というものだった。
食生活と体重への悪影響を示唆する結果に
今回の研究の背景にあるのは、英国において両親と公的機関以外で最も育児を担っているのは祖父母であるという事実だ。
研究者らもその点を認めており、「育児の最大手とも言える祖父母には、孫の健康にとって最善の情報を得る必要がある」と考え、今回の研究に取り組んだと11月15日付のBBCの取材に答えている。
研究の方法は、欧米、中南米、アジア、中東に至る異なる文化圏18か国から発表された、子どもの健康状態に祖父母が与える影響を調査した論文56件をレビューするというもの。子どもが重篤な病気になっている場合や、祖父母が両親の代わりに子どもを養育している場合は除外された。
論文は調査人数や調査方法によって「質が高い」「中程度」「低い」に分類され、祖父母が子どもの健康に「有益」「有害」「混在」「影響を与えない」のいずれを示唆したかを判定。
影響を受ける因子として子どもの「体重」「食生活」「身体活動量」「タバコの煙への曝露」「アルコール消費量」「日光暴露量」の6つを設定している。
この6つはいずれも長期的ながんリスクに関係している因子であり、今回の研究は「祖父母が孫の将来的ながんリスクにどの程度影響するか」を調べたものと言えなくもない。
体重に関する研究では17件中12件で「影響なし、もしくは有害」、3件で「有害かつ有益」、2件で「影響なし」となり、祖父母の悪影響を示唆する結果になった。
食生活では26件中15件が「有害」、9件が「有益」、残りは「影響なし、もしくは有害」で、やはり悪影響との結果になった。
身体活動量では有害と有益の混在を指摘する研究が13件中5件、タバコの煙への曝露を指摘する研究は16件中9件で、アルコール消費量と日光暴露量は該当する研究が存在しなかった。
研究者らはこれらの結果を踏まえ、
「祖父母は子どもの健康に多くの影響を及ぼす可能性が高く、健康な育児のための情報や助言を祖父母に対しても積極的に提供する必要がある」
とコメントしている。
NHSは「多くの祖父母は孫の健康に配慮」
祖父母に非があるかのような結論だが、研究の設計にはいくつか限界もある。
例えば、今回はあくまでも祖父母が与える悪影響を調査しており、ポジティブな影響は何も調査していない。仮に今回判明した以上のポジティブな影響を与えているのであれば、リスクをベネフィットが上回っていると考えられなくもない。
また、レビューした研究には祖父母自身ではなく両親の証言に基づいているものもあり、両親が祖父母は悪影響であると思い込み、結果にバイアスがかかっている可能性も否定できない。
今回の研究を受け、英国民保健サービス(NHS)は公式サイト上で、「多くの祖父母が孫のケアに大きな役割を果たしており、大半の祖父母は健康的な食事を提供し、運動を十分に行い、タバコの煙に曝されないよう配慮している」とコメントし、次のような声明を発表していた。
「孫のネガティブな健康リスクを高めるような児童虐待者は多くないが、健康に影響を与える体重、食べ物、運動などの健康的な育児アドバイスには、両親だけでなく祖父母も含める必要があるとする研究者らの提案には同意する」