横綱・日馬富士による暴行問題で揺れる角界だが、今度は大相撲の土俵上で波紋が広がった。しかも当事者は、今場所「ひとり横綱」となった白鵬だ。
九州場所11日目(2017年11月22日)、関脇・嘉風との対戦で、「待った」が認められず土俵の外に押し出された。白鵬は片手をあげて自ら「物言い」。その後も土俵上になかなか戻らない。ようやく土俵に上がり嘉風が勝ち名乗りを受けた後、今度はその場に立ち尽くした。現役力士の頂点に立つ横綱の態度に、批判が高まった。
NHKアナが「こんなことは、あってはならない」
問題の取組を振り返ってみよう。立ち合い、白鵬は左から「張り差し」に行くが、嘉風は少し遅れてふわっと立ったように見える。すると組み合った瞬間、白鵬は力を抜いて棒立ちになった。ところが行司は「待った」を告げない。嘉風は一気に白鵬を土俵際まで持っていき、寄り切った。
土俵下であっけにとられたような表情の白鵬は、右手を挙げた。「物言い」をつけたようだが、5人の審判は誰も動かない。勝負はついたが、白鵬は抗議のためか、土俵に戻らずアピールを続けた。審判に促されてようやく戻っても、納得のいかない表情。勝ち名乗り後そのまま土俵に立ったまま、弓取り式が始まる直前まで居座った。
嘉風は取組後のインタビューで、「横綱は待ったと思って一瞬力を抜いたけれど、行司さんの『のこった』の声がいつも以上にしっかり聞こえたので、『成立だ』と思って。ああなったら出るしかないんで」と答えた。一方の白鵬は「立ち合いで呼吸が合わなかった。審判にもう1回確認してもらいたかった」と話した。
一見すると両力士とも立ち合いに息が合っているようにも見える。だが11月23日放送の「情報ライブミヤネ屋」(日本テレビ系)に出演した元小結・旭鷲山は、「自分も待っただな、と思った」と感想を語った。ただ、力士が物言いをつけられるのは控えにいるときだけ。「当事者」である白鵬自身が自分の取組に抗議することはできない。
礼に始まり礼に終わる相撲道。しかも、優勝39回を誇る大横綱の、前代未聞ともいえる土俵上の振る舞いに、NHKの実況アナウンサーは「こんなシーンは見たことがありません...これはいけません。こんなことは、あってはならないことです」と指摘した。