プロのイラストレーターでは3万円かかる仕事を、絵が得意な主婦に依頼したところ2500円で済んだ。「大幅にコストダウンできた」。そんな情報をNHK朝の情報番組「あさイチ」で放送したところ、イラスト関係者と思われる人たちから「お願い!安請け合いしないで!!」と悲鳴があがることになった。
この主婦は自分のスキルをネットで売るサイトに登録し、年間50件程の依頼を受けている。単価が安いためそれほど大きな金額にはならないが「とても助かっている」と笑顔を見せたが、本業のプロは「価格破壊が起こる」と気が気ではないのだ。
絵を描くのが好きで、ずっと趣味にしてきた
「あさイチ」(2017年11月20日放送)では、専業主婦でも特技があればネットでお金を稼げる、という特集を放送した。特技を売り買いするサイト「ココナラ」に登録している主婦の家をカメラが訪れ、描いた内容がデータ化されるタブレットでイラストを描く主婦の姿を映した。仕事を請け負って完成したイラストを送るのは全てネット上で行っている。料金は1000円から3000円ほど。物心ついた時から絵を描くのが好きで、ずっと趣味にしてきた。2歳の娘を育てていて、稼いだお金で子供に雑誌を買ってあげたり、2人でパン店に行き、いいものを買うことが気兼ねなく出来る。この仕事をするようになり、
「予想よりは儲かっているのかなと。とても助かっています」
と笑顔を向けた。この主婦にブログの画像やチラシのイラストを依頼したという沖縄の薬局を営む女性が登場し、
「とても可愛くていい絵だったので、嬉しかったです」
と語った。そしてナレーターはこう説明した。以前プロに頼んだ時は3万円かかったが、2500円で済んだ、とし、
「今回は(薬局店が)大幅にコストダウン。さらに、仕上がりも希望通り」
とした。
これに驚いたのがイラストを仕事にしたり、イラストレーターを目指そうとする人たちだ。これを特技とか、コストダウンなどという話にされたらたまらない。あの描き方や完成度ならば3万円以上するのはあたりまえだ、とし、
「このカットで、こんな安い値段でイラスト描かれたらイラストレーターを本業でやってる人の仕事が無くなるよ」
などといったことがツイッターや掲示板に書き込まれた。
「プロが受け取る報酬がどんどん下がってきてる」
そして、あのイラストを見る限りでは相場は3万円以上になるのは間違いないとし、
「お願い!無能な私のために安請け合いしないで!!」
「こういう素人さんの『作業』が増えることで、プロが『仕事』で受け取る報酬がどんどん下がってきてる」
「それやったら市場破壊起きるって話だよ」
などとネットの一部が騒然となった。番組に対する批判もあり、確かに「お得情報」かもしれないが、
「番組が依頼側の視点だから、コストカットでお得なのは当たり前」
「下請けを安く使役しているマスメディア的発想だよねwww」
などという感想も出た。
「ココナラ」は、プロ、アマ問わず、自分の特技を「売っている」サイトだ。美容やファッションのアドバイス、老後の生活提案、占いから、本物の弁護士が「離婚・男女問題に強い」という謳い文句で相談を受けている。殆どがネット上でやり取りし完結するサービスで、
「こうした仕事の受注が普通に行われるようになれば、これからの仕事の選び方も変わらざるを得ない」
と感じている人もいる。