週刊金曜日の特集記事と単行本に「盗用」があったとして、誤報検証サイト「GoHoo」を運営する日本報道検証機構が「金曜日」側に抗議し、同誌は2017年11月17日発売の同日号で「お詫び」を掲載した。
抗議を受けた記事は、産経新聞の報道を批判する内容で、記事ごとに「捏造」「誤報」などと分類していた。他メディアを批判する記事で盗用が発覚するのは極めて異例。記事を「盗用」された機構は、金曜日側の再発防止策が明確でなく、「メディアとしての責任を果たしたとは到底言えず、誠に遺憾」だとしている。
単行本では「『事実』をもって反論!」とうたう
盗用があったのは、「金曜日」の2月17日号に「どうなってんの? 続出する産経流『捏造記事』一覧」と題して掲載された記事。「ここ数年分の主な誤報・捏造記事を、挙げてみた」という趣向で、「捏造」の一例として、14年5月31日の産経記事について
「アジア安保会議で『靖国参拝に賛同拍手』」
の見出しで、
「安倍首相がシンガポールでのアジア安全保障会議で講演した際、1面で『首相の靖国参拝 会場に賛同の拍手』と見出しが。しかし拍手が起きたのは『平和国家として歩む』と発言した際で、『靖国』は何の関係もなかった」
などと解説していた。だが、この記事はGoHooが14年11月17日に
「アジア安保会議『靖国参拝に賛同拍手』はミスリード」
の見出しで掲載した記事に酷似していた。GoHooの記事は
「5月30日、安倍晋三首相がシンガポールで開かれたアジア安全保障会議で基調講演を行ったことを受け、産経新聞が31日付朝刊1面に『首相の靖国参拝 会場に賛同の拍手』と見出しをつけた記事を掲載した。実際に会場から拍手が起きたのは、首相が『これからひたすら平和国家として歩むことを宣言したい』と発言した直後だった。産経の見出しと記事は、あたかも会場の出席者が靖国参拝に賛同する意図で拍手をしたかのような誤った印象を与えた可能性が高い」
という内容だった。なお、GoHooの記事には「捏造」という表現は登場しない。
「金曜日」の記事は加筆の上、17年7月発売の単行本「検証 産経新聞報道」にも収録された。この単行本の帯では、産経新聞をウォッチしてきたが記者やジャーナリストが
「『事実』をもって反論!」
とうたっていた。
2005年には共同&時事の記事を盗用
「金曜日」の「お詫び」によると、「金曜日」本誌で取り上げた11事例のうち7事例、単行本の21事例のうち10事例が、GoHooの内容をベースにしていた。
「担当編集者が同機構の記事を参考にし、そこに書かれていた誤報の事実を確認した上で本誌および単行本用にまとめたものです」
と説明。通常は必ず出典を明記しているが
「今回はそれを怠り、日本報道検証機構および関係者の方々に多大なるご迷惑をおかけしてしまいました」
として陳謝した。単行本については
「増刷分より引用先を明記しております」
とした。
日本報道検証機構は11月22日午後に談話を発表し、(1)原因や再発防止策が不明確(2)問題を指摘して3か月が経過しても初版本が販売されている(3)執筆者から謝罪がなく引き続き「金曜日」の常連執筆者になっている、などと指摘。
「これらの対応をみるとメディアとしての責任を果たしたとは到底言えず、誠に遺憾であります」
とした。なお、J-CASTニュース編集部が千代田区内の書店で入手した単行本も、出典が明記されていない初版だった。
週刊金曜日は05年、配信契約を結んでいない共同通信と時事通信の記事を「無断使用」したとして謝罪記事を掲載。「『盗用』と指摘されてもいたしかたないケースと考えます」としていた。