消費税のうち各都道府県の税収となる地方消費税の配分方法の見直しが、2018年度税制改正の焦点に浮上している。財務省が、大都市への偏重を是正するため、大半を各地の「消費額」に応じて自治体に配っている現行基準を見直し、人口に応じた配分を基本とするよう改める方針を打ち出したのだ。これに対して大幅に税収が減ることになる東京などが猛反発している。与党の税制調査会で詳細を詰め、17年12月にまとめる18年度の税制改正大綱に盛り込まれるが、決着まで厳しい議論が続きそうだ。
地方消費税は1997年に消費税率が3%から5%に引き上げられた際、1%分を地方税収にする形で創設された。現在は消費税率8%のうち国の取り分が6.3%分で、残り1.7%分が地方分として各都道府県に配られる。2016年度の税収は約4.7兆円。
「最終消費地」で納めるのが大原則だが
消費税は、消費者がモノを買ったりサービスの提供を受けたりした「最終消費地」で納めるのが大原則。神奈川県民が東京で買い物をすれば東京の税収になるということだ。ただ、消費の実態は把握しきれないから、小売の販売統計や人口などの数字に基づいて配分する基準を決めている。具体的には、税収の75%を「消費額」、17.5%を「人口」、7.5%を「従業員数」に応じて算出している。この結果、百貨店などの大型店や本社が集まる東京など大都市に配分が偏ると指摘される。人口1人当たりの税収は、最も多い東京と、沖縄、埼玉、奈良など下位の自治体との間で最大約1.6倍の格差がある。
これまでも税率引き上げなどの際に微修正され、さらに1年前の改正論議の結果、2017年度からは、配分が都市部に偏る一因とされたインターネットなどの通信販売を基準となる消費額から除外したうえ、人口と従業者数の割合を人口15%から17.5%に、従業者数を10%から7.5%に変更した。しかし、抜本的な改定はされず、今回、本格的な見直しとなるか、注目されている。
財務省は、人口をより重視した配分方法に改めるよう求めており、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が取りまとめ中の2018年度予算編成に向けた「建議」に「人口基準の比率を高めるなど抜本的な見直し」との文言が盛り込まれる見通しだ。
大都市が反発
財務相の理屈は、消費税が高齢者や子育て世帯を対象とした社会保障の財源であることを重視し、人口を中心に配分するのが適切、というものだ。具体的には、消費額や従業員数という基準をなくし、単純に人口に応じて配分する案のほか、人口でも15歳未満と65歳以上の「老齢・年少人口」の比率に応じて配分する案などが浮上している。後者は少子化・高齢化への対応という狙いを明確にするものだ。
これに強く反発しているのが東京都を筆頭にする大都市だ。東京都、大阪府、愛知県は11月14日、野田聖子総務相に対し、「税収を収奪することを意図した不合理なものだ」として、再考を求める要請書を提出。この中で、「地方消費税は安定的な自主財源として必要不可欠」と指摘し、人口比率などで配分するのは「頑張る地方が報われない仕組みとなりかねず、地方創生の理念とも相いれない」などと批判している。総務省への要望後、小池百合子都知事は、「人口比率をことさらに高めると地方税の意義そのものを失う。断じて行わないように要請した」と述べた。
実際にどの程度税収に影響するかは不明だが、配分比率の変更の仕方によっては、東京都の税収が1000億円減るとの試算もあるだけに、小池知事らは必死だ。
財務省の問題提起だが、具体的な見直し作業を担当するのは総務省で、検討会を設けて議論を進めている。総務省も、人口比率を高める必要は認めているが、野田総務相は「(消費税収は)消費地に帰属させるのが基本」(10月31日の会見)と述べており、人口を過度に重視することには慎重。今後、与党税調を舞台に財務省とやり合うことになる。
「希望の党が惨敗」の影響
今回の議論は、「東京は裕福」として一定の負担を求められるということでは、年末の税制論議、予算論議の「恒例行事」とも言える。過去にも、法人事業税・法人住民税をめぐる東京負担など厳しい議論があった。ただ、今回は小池知事の存在が議論に微妙な影を落としているとの指摘がある。
税制に関する都としての理論武装の場ともいえる都の税制調査会は例年、10月に答申を出すが、今17年は衆院選が突然実施され、これに小池知事が希望の党を設立して参戦するという一連の事態を受けて、都税調の議論が停滞し、答申が遅れている。さらに、「希望の党の惨敗で小池知事の立場が格段に弱体化したうえ、対立する都議会自民党に、与党税調への働きかけの側面支援を頼むのも難しい」(全国紙政治部デスク)。
現実には、100%人口で配分するなどの極端な結論は考えにくく、消費額と人口のバランスをどう修正するかという落とし所を探ることになるが、現状で押され気味の東京都など大都市側がどこまで押し戻せるか、予断を許さない。