怒りを抑える役の前頭葉が衰えてくる
いったい、どういうことか。『脳が知っている 怒らないコツ』の著者、加藤俊徳医師が説明する。
加藤医師「脳の中心部に大脳辺縁系という場所があります。意欲や感情などをつかさどるところで、ここで怒りが作られます。それを抑えるのが前頭葉という知性の場所ですが、年をとると前頭葉の機能が衰え、抑えが利かなくなるのです。また、加齢とともに記憶力や聴力も衰えますから、相手の話を理解できず、怒りに拍車をかけます。脳の衰えを本人が自覚していませんから、訳がわからないまま暴発します」
ただし、個人差があり、すべての高齢者がそうだとは限らない。
第2に「生活環境の変化が大きく影響している」と指摘するのは社会学者の小宮信夫・立正大学教授だ。その典型的な例として、大手メーカーを9年前に定年退職した木村悦治さん(68歳)のケースを紹介した。木村さんは管理職コースを上りつめ、職場や家庭では穏やかな人柄として知られ、声を荒げることはなかった。ところが退職後、キレることが多くなった。
妻の美智子さん「小さなことで怒りを爆発させるようになりました。銀行の窓口で書類の不備を指摘されると、バーンとテーブルを叩き......」
木村さん「会社での人間関係は、上に行くにつれ周囲が私の考えを理解しようと努め、柔らかく、温かく接してくれるじゃないですか。ところが、退職すればただのジイサンです。若い者に思いっ切りバカにされると怒りが抑えられなくなります」
小宮教授「今は年功序列ではなく、能力主義の時代ですから、若い人に年寄りを敬う気持ちはありません。高齢者にとっては、昔、自分たちが年寄りに対して接した態度をなぜ若い人がとらないのかという怒りがあります」
第3の理由に、小宮教授は「高齢者には、今の情報社会、ITやSNSに付いていけず、置いてきぼりにされているという不安があります」と指摘する。
高瀬キャスター「高齢者がますます怒りっぽくなる社会になっているということですね。では、どうしたらよいのでしょうか」
怒りを覚えた時の対処法として、日本アンガーマネージメント協会代表理事の安藤俊介さんはこうアドバイスした。
安藤理事「『腹が立ったら6秒待つ』。これを実践してください。やってみると、かなり怒りが収まります。6秒間は、前頭葉が怒りを抑制するのに必要な時間なのです」