家にいるときはいつもテレビを見ている、という生活が動脈硬化リスクを高めるとした研究は2016年に発表されているが、どうやら静脈も危ういようだ。
2017年11月12日に米カリフォルニア州で開催された米国心臓協会(AHA)の「サイエンティフィック・セッション2017」で、テレビの視聴状況が静脈内にできる血栓リスクに影響しているとする研究結果がミネソタ大学、バーモント大学、ノースカロライナ大学の研究者らによって発表されたのだ。
健康的な生活でもテレビ視聴時間が長いと...
今回の研究が調査対象としたのは「静脈血栓塞栓症(VTE)」と呼ばれる、静脈内に血栓(凝固した血の塊)ができた状態だ。聞きなれない名前かもしれないが、いわゆる「エコノミークラス症候群(旅行者血栓症など)」もVTEのことだ。
腕や足の静脈に発生することが多いが、大抵の場合、血栓は血流に流されて心臓を介して肺まで達し「肺血栓塞栓症(PE)」という即死の可能性もある病気を引き起こす。
無症状である場合が多く、体内の深い位置にある静脈に血栓ができ「深部静脈血栓症(DVT)」となった場合は足の腫れや痛み、浮腫(むくみ)などが表れることもある。
米国では血管系の病気の中で脳卒中、心臓発作に次いで死亡数が多い病気となっており、問題視されているという。
研究者らはテレビ視聴と動脈硬化の関係を指摘する研究を受け、VTEに及ぼす影響も分析するため、動脈硬化リスク調査として1987年に開始された追跡調査から、VTEではないと診断されていた1万5158人(平均年齢45~64歳)のデータを抽出。テレビの視聴状況とVTE発症率を検証している。
テレビ視聴は頻度に応じて「とても頻繁に視聴(毎日5時間以上)」「頻繁に視聴(毎日2.5~4.9時間)」「あまり視聴しない(毎日2.5時間以下)」「まったく視聴しないかまれ」の4つに分類された。
その結果、「とても頻繁に視聴」している人は「まったく視聴しないかまれ」な人に比べVTE発生リスクが1.7倍高くなっていた。
また、定期的に運動をする習慣があり、テレビの視聴状況が「とても頻繁に視聴」であること以外は健康的な生活をしている人でも、「まったく視聴しないかまれ」な人と比べるとVTEリスクは1.8倍となっており、テレビから受ける影響が非常に大きいことが確認されたという。
テレビばかり見ているということは、身体活動量や食生活が乱れており、そのせいで肥満になってVTEリスクが高まっているのでないかとも考えられる。研究者らも肥満の影響を検証しているが、今回の調査でVTEリスクに占める肥満の影響は25%程度と小さく、テレビ視聴によるものだと判断できると結論付けていた。