東芝の2017年4~9月期連結営業利益(米国会計基準)は、前年同期の2.5倍に当たる2318億円となり、28年ぶりに過去最高を更新した。だがその大半を稼いだのは、売却が決まっている半導体メモリー事業。「売却後」を考えると、とても喜んではいられない。
東芝は2017年11月9日、今期の中間決算を発表した。売上高は前年同期比5%増の2兆3862億円、当期純損益はメモリー事業売却に伴う税金を前倒しで計上した影響で498億円の赤字(前年同期は1153億円の黒字)だった。
メモリー偏重
分野別にみると、「メモリー偏重」がはっきりする。メモリー事業が属する「ストレージ&デバイス」部門は売上高9720億円に対し、営業利益は2358億円。東芝全体の利益を超えるほど好調だった。この中でも、メモリーは売上高5618億円に対して営業利益は2050億円で、売上高営業利益率は36.5%ときわめて高かった。スマートフォンやデータセンター向けの需要が旺盛で、売価も安定的に推移したことが要因だ。HDDの売上高は2%増の2263億円で、営業利益は136億円と前年を2億円ほど下回った。
メモリー部門の好調を受けて東芝は、2017年度の東芝メモリ四日市工場への設備投資額を2000億円増額し6000億円にすると決めた。10月11日に、従来の3300億円から4000億円に増やすと決めたばかり。半導体メモリー業界は、莫大な資金投下が継続的に必要とされる。世界首位の韓国サムスン電子に離されまいと、今回、18年度の予定だった発注を前倒した。
一方、「ストレージ&デバイス」以外は相当厳しい。エレベーターなどのビル関連が主力の「インフラシステム」部門は、売上高が2%減の5521億円、営業利益は76%減の27億円と減収減益だった。火力・水力発電所関連が主力の「エネルギーシステム」部門は、売上高が4%減の4330億円、営業損益は40億円の赤字に転落した(前年同期は60億円の黒字)。地道に稼いでいたスマートメーター大手、ランディス・ギア株を2017年7月にすべて手放しており、今後の収益環境はますます厳しくなりそうだ。
「削りに削って」の先
POSレジ事業を抱える「リテール&プリンティング」部門の売上高は微増の2478億円、営業利益は74%増の113億円。増益は確保したものの、売上高営業利益率は4.6%と決して高くはない。IoTなどを展開するインダストリアルICT部門の売上高は7%増の1187億円だったが、19億円の営業赤字(前年同期は28億円の黒字)と振るわなかった。
「その他」に属するテレビ事業、パソコン事業はともに減収、営業赤字。2017年11月14日、テレビ事業については中国ハイセンスグループに約129億円で売却し、撤退することも決めている。
事業とは直接関係ないが、野球、ラグビーなどのスポーツ活動や、アニメ番組「サザエさん」のスポンサーなど、聖域なく見直す方針を掲げる東芝。稼ぎ頭の半導体メモリー以外は低迷しているだけに、削りに削って本当に再生できるのか、不安視する声も高まりそうだ。