神戸製鋼所は2017年11月10日、一連のアルミ・銅製品などの品質検査データ改ざんをめぐり、不正の原因究明と再発防止策を発表した。今回の調査は社内の「お手盛り調査」に過ぎず、工場などの現場に不正の責任を押し付け、工場長ら幹部や本社の関与を否定した。
経営陣にとっては都合のよい調査報告書で、これでは現場の社員らの反発は必至だ。最終的な調査結果は弁護士らで組織する外部調査委員会に委ねることになり、新たな内部告発なども予想される。今後は一連の不正に本当に本社や経営陣が関与していなかったのか――などが焦点になる。
記者会見で質問と答弁がかみ合わず
今回の原因究明と再発防止策の発表は、川崎博也・会長兼社長が2017年10月12日に経済産業省の多田明弘・製造産業局長から「1か月以内」をめどに公表するよう求められたためだ。神戸製鋼は当初、「原因究明には2017年度いっぱいかかる」と漏らすなど、当事者意識に欠け、対応が後手に回っていた。業を煮やした経産省は神戸製鋼や日産自動車など一連の不祥事で日本の製造業全体の信頼が傷つくことを懸念し、速やかな対応を求めていた。
これを受け神戸製鋼は今回、26ページにわたる報告書をまとめたが、川崎会長兼社長の記者会見は、記者の質問と川崎氏の答弁がかみ合わず、堂々巡りのまま2時間余りに及んだ。
川崎氏はデータ改ざんなどの原因については、(1)収益評価に偏った経営と閉鎖的な組織風土(2)バランスを欠いた工場運営(3)不適切行為を招く不十分な品質管理手続き――など5項目を挙げた。再発防止策については、「試験検査データの記録に関する自動化を推進する」「事業部門・事業所間を横断した人材のローテーションを行う」などと具体策を列挙した。
いずれも不正は工場など現場の判断で起きたもので、「直属の上司からの明示または黙示の指示があった」としたが、「工場長クラスが明確に指示したか、までは現時点ではわかっていない」など、経営陣や幹部の関与は否定した。自身の関与を問われた川崎氏は「私の専門は機械設備。建設機械の設備改善が主だった。そういう経緯で(アルミ・銅製品などの)品質(管理)に接することがなかった」と述べ、明確に否定した。
どうなる外部調査委員会の最終報告
川崎氏は自らの経営責任を問われても「収益さえ出ていれば、あとは事業部門に任せていたことを考えれば、反省すべき管理構造ではなかったか。品質に関しては経営上の課題があったと認識している」など、まるで他人事であるかのような発言が目立った。
神戸製鋼は、元福岡高検検事長の松井巌弁護士を委員長とする外部調査委員会を設置し、年内をめどに最終報告書をまとめることになっている。川崎氏は「外部調査委員会の報告を受け、社内の規定に則って処分を決めていきたい。私を含めた役員の処分は最終報告の後、必要な時期に判断させていただきたい」と述べた。
外部調査委は現役社員やOBらの聞き取り調査を進めている。今後の調査で本社や経営陣の関与が明らかになる可能性は否定できず、年内をめどとする最終報告と川崎氏の対応が注目されている。