実際には骨折よりも裂傷が致命傷?
ビール瓶の威力は十分に理解できたが、実際にビール瓶で殴られ頭蓋骨を骨折したという例は多いのだろうか。
法医学分野の学術誌をいくつか見てみると、1992年にケルン大学の法医学者らが発表した「Skull Injuries Caused by Blows With Glass Bottles(ガラス瓶で殴打された頭蓋骨の損傷)」という論文があった。
内容はビール瓶やワインボトル、ビアジョッキなどのガラス瓶で頭部を殴打され重大な傷害を負ったり、死亡した場合の原因を調査したものだが、興味深いことに頭蓋骨骨折や重度の脳挫傷などは死因になっておらず、むしろまれな損傷であるとされていた。
ガラスの弾力性や殴打した位置、被害者の髪の量、頭皮の厚さ、頭蓋骨の形状と厚さ、骨の弾力など様々な要因があるため、殴っただけで頭蓋骨が骨折することは珍しく、先に瓶が割れる場合も少なくないというのだ。
むしろ致命傷になるのは、割れたガラス瓶が鋭利な刃物として頭部に負わせる裂傷となっており、傷口からの出血によって死亡した例が多かったようだ。25年前の研究なので今とビール瓶状況(?)は異なるかもしれないが、いずれにせよ注意が必要だ。
殴る側として実践するのは論外だが、お酒の席で揉めそうになったときは、まずガラス瓶類を片付けておいた方がいいだろう。