米議会の諮問機関が発行している中国に関する年次報告書で、新華社通信をはじめとする中国国営メディアが「情報機関の機能のいくつかを担っている」として、記者をはじめとする職員を、ロビー活動を行うエージェント(代理人)として登録を義務付けるように提言した。
中国に限らず国営メディアは政府の意向が反映されることが多いが、その記者を半ば公然とスパイ扱いして対策を求めるのは異例だ。中国側は報告書を「完全にフィクション」だとして反発している。
新華社は「情報機関の機能のいくつかを担っている」
年次報告書は米議会の諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」が2017年11月15日(米東部時間)に公表。米軍と人民解放軍の力の均衡が崩れれば軍事的衝突に発展する可能性がある、などと中国の影響力拡大を警戒する内容だ。中国メディアの影響力についても言及している。
「中国共産党は、中国国内では政治的に微妙な報道への圧力を強める一方で、中国の国際的なイメージを支えるために、政府が認めた記者の国外でのプレゼンス拡大を強く支援している」
などとして、新華社通信が国外で支局開設を増やしていることを指摘。その中で、同社が単なる報道機関ではなく、情報機関の側面があるとした。
「新華社の急速な国外での成長には、中国政府とのつながりを理由に、懸念の声が上がっている。新華社は、国内・国際の両方の出来事について、中国の指導部のために情報を収集し秘密報告書を作成しており、情報機関の機能のいくつかを担っている」
報告書では、その根拠として、カナダ人の新華社記者が、チベット仏教の最高指導者・ダライ・ラマ14世とカナダ首相の私的会談の内容を調べるように求められ、中国のスパイとして活動することを求められていることを知って辞職した事例や、オーストラリアに亡命した元中国外交官の
「新華社の記者の中には、報道で外国の政策に影響を及ぼすプロパガンダの任務がある人もいた。これには、共産党を良く見せるために、西側諸国を中傷することも含まれていた」
などと証言したことを挙げている。