南米原産の毒針を持つ「ヒアリ」の国内侵入が世の中を騒がせているが、逆に日本から米国に侵出、猛威をふるっているアリがいることをご存じだろうか。やはり毒針を持つ「オオハリアリ」だ。
米国で在来アリ種を駆逐しながら分布を拡大している実態が京都大学・岡山大学・琉球大学と米ノースカロライナ州立大学の日米共同研究で明らかになった。研究成果は英科学誌「Scientific Reports」(電子版)の2017年11月3日号に発表された。
世界一獰猛のアルゼンチンアリの手強いライバル
京都大学の発表資料などによると、アリの世界でも外来種の問題は深刻になっている。特に褐色のアルゼンチンアリや赤いヒアリなどの獰猛な種類は、進出する先々で現地のアリに壊滅的な打撃を与えており、アルゼンチンアリなど南極大陸以外は生息していないところは地球上にないといわれるほどだ。そのアルゼンチンアリに対し、米国で手強いライバルとなっているのが、日本から進出したオオハリアリなのだ。
日本が原産地の黒色のオオハリアリはシロアリ専門の捕食者として知られる。オオハリアリは森の朽ち木の中などに巣を作る。シロアリが枯れ木を好んで食べて巣を作るからだ。オオハリアリはシロアリの営巣木に同居し、毒針でシロアリを刺殺して捕食する。人間も刺されるとアナフィラキシー・ショックを起こすことがあり、年に数例刺されるケースが報告される。ヒアリと違ってあまり話題にならないのは、森の奥に生息しているからだ。米国には1930年代に進出したといわれ、森林地帯で勢力を拡大、近年はニューヨーク市内でも見られるようになり恐れられている。
研究では、まず、原産地の日本と侵入地の米国で朽ち木に営巣するシロアリと在来のアリの採集調査を行い、オオハリアリの米国への侵入が在来種にどのような影響を与えているかを調べた。また、オオハリアリの体の分子内の窒素と炭素の比率を調べ、オオハリアリの食性が原産地の日本と侵入地の米国では異なるかどうか調べた。シロアリの窒素と炭素の比率がわかっているので、ほかの動物も食べているかどうか推測できるのだ。