風力発電施設の風車に衝突して死んだオジロワシが入れられているという袋が山積みになった写真が、北海道釧路市内にある猛禽類医学研究所の公式ツイッターに投稿され、驚きの声が広がっている。
袋は透明で研究室の床に10以上も積み上げられ、中には、立派な羽が見えているのもある。
冷凍保存してきた20個体を研究で一時的に取り出す
この写真は、研究所の齊藤慶輔代表・獣医師名の公式ツイッターで2017年11月14日にアップされた。研究所は、環境省の委託を受けてワシの救護活動などを行っており、このツイートで「温室効果ガスを出さない発電方法として、エコの代名詞的に取り上げられることもある風力発電。その裏で絶滅の危機に瀕した猛禽類が次々と死んでいる現実を直視しなければ、野生動物との共生は永遠に実現しない」と訴えている。
オジロワシは、国の天然記念物に指定されており、絶滅が危惧されている。ツイートは、15日夕現在で、2万件以上もリツイートされており、「知らなかった。ショック」「只々心が痛い」「ECOと自然動物保護、、考えさせられる、、」といった声が次々に書き込まれている。
猛禽類医学研究所の渡邊有希子副代表・獣医師は15日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように説明した。
「2004年ごろから、北海道でも風が強い道北の日本海側に風力発電施設が次々に建設されており、そのころから衝突死した個体を冷凍庫に保存しています。概ね40個体ぐらいがあり、今回は、そのうち20個体の羽を採取して研究するため一時的に出したものです」
ワシが飛ぶルートにも、風力発電施設が設置
毎年、同じぐらいの数のオジロワシが衝突死しており、単純に計算すると、年に3羽が「バードストライク」の犠牲になっていることになる。ただ、風車の下では、キツネがうろついているといい、オジロワシの死骸は回収しきれておらず、実数はもっと多いのではないかと渡邊副代表は見る。
風力発電施設が多く立地する稚内市、苫前町などでは、上昇気流が流れる丘の上はオジロワシなどが飛ぶルートになっている。夏に繁殖したワシが冬に北海道で越冬するためにこのルートを渡ってくるが、同時に風が強くて風力発電にも適しているため、バードストライクの悲劇が起きるらしい。
防止策としては、風車にワシなどが認識しやすい色を塗ったり、光や音を出したりする試みはあるが、効果的なものは見つかっていないという。しかし、ワシが飛ぶルートにあって衝突が多い施設は絞られるため、発電事業者には配慮して運転をストップするように働きかけているとしている。
道北で風力発電施設を設置しているある大手の事業者は15日、バードストライクの防止策について、「環境アセスメントを実施してワシなどの生態を確認したうえで設置しており、運転開始後も、状況を確認してその都度、個別に対応しています」と取材に説明した。どんな対応を取るかは一概には言えないとし、施設の運転をストップすることも考えていないとしている。