【健康カプセル ゲンキの時間】(TBS系)2017年11月12日放送
糖質制限ダイエット新常識
最近、「糖質制限ダイエット」がブームだ。シャリのない回転寿司、ご飯のない「牛丼」、麺抜きラーメンが人気を呼び、あたかもお米やパン類をまったく食べない方法と勘違いしている人が多い。
糖質を完全に断つと、むしろ太ってしまうばかりか、栄養バランスを崩して、重病を引き起こす心配もある。「糖質制限ダイエット」の第一人者が正しい方法を伝授する。
シャリ抜き寿司、麺抜きラーメン、メシ抜き牛丼まで
番組では冒頭、恒例の健康クイズが出された。「糖質、糖質とよく言うが糖質とは何か? 実は食物成分表で炭水化物からある物を引くと糖質になるが、ある物とは何か?」。正解は「食物繊維」だ。糖質の量を知りたい場合、成分表に食物繊維の表示がなければ、炭水化物の量がそのまま糖質となる。それほど炭水化物は糖質が多いというわけだ。
最近、お米やパン類を使わない動きが外食産業に広がっている。回転寿司チェーン店の「くら寿司」では、シャリの代わりに大根の酢漬けを使用した寿司、その名も「シャリ野菜」がヒットしている。同店では、ラーメンもまさかの麺抜き! スープはそのままながら麺の代わりに野菜を多く入れた。牛丼チェーン「すき家」ではご飯の代わりに冷奴を使った「牛丼ライト」を販売。「モスバーガー」ではバンズ(小麦)の代わりにレタスで具を挟むメニューも。日本を席巻する糖質制限ブームだが、間違いだらけのダイエットが横行している。糖質制限ダイエットに詳しい山田悟・北里大学研究所病院糖尿病センター長はこう解説する。
山田医師「糖質制限ダイエットは1920年代から糖尿病の治療に使われてきました。肥満というと、脂質の方が注目されますが、実は糖質こそが肥満の元になる唯一の栄養素なのです。食事で糖質をとって血糖値が上がると、すい臓からインスリンが分泌され、体の様々な部分にエネルギーとして糖が取り込まれるのを手助けします。しかし、糖質をとりすぎると、インスリンは糖を中性脂肪として内臓にため込み、肥満になるのです」
糖質は摂りすぎても減り過ぎても太る原因に
しかし、糖質制限をすればするほどダイエットにつながるかというと、そこに落とし穴がある。糖質制限をしすぎると、思わぬリスクが待っている。山田医師監修のもとに危険なダイエットを再現しよう。50代男性の中田さんはご飯やパン、麺類を一切食べない徹底した糖質制限を始めた。例えば、コンビニで生姜焼き定食を買い、ご飯だけを捨てて食べるといった方法を続けた。確かに3キロ減ったが、疲労やめまいに襲われるようになった。
山田医師「ご飯の中にも必要なタンパク質や脂質があります。糖質を制限しすぎると、バランスが悪くなり、ほかに必要な栄養素まで制限してしまうことになります。疲労やふらつき、それに骨粗しょう症になる心配があります。また、糖質が体内で減り過ぎると、肝臓がケトン体を作り出します。ケトン体の成分とコレステロールの成分は同じですから、ケトン体が増えると悪玉コレステロールも一緒に増えてしまいます。つまり、糖質はとりすぎても、摂らなすぎても肥満になるのです」
それではどうしたらよいのか。山田医師は「ロカボ」がよいという。ロカボとは、糖質(カーボ)を低く(ロー)抑えて1日を通して適性糖質量を食べるという方法。一般の人は1日に約300グラムの糖質を摂取しているが、ロカボでは1食20?40グラムに抑え、1日全体での糖質量を130グラム以内にする。具体的には、ロカボでいう1食のご飯の適量は70グラム。これはお椀1杯分の3分の1以下だから、かなり少なめだ。これでも糖質量が26グラムもある。パンなら6枚切りの食パンで1枚、うどんなら4分の1玉だ。
トンカツ、マヨネーズがOKで、果物がダメな理由
番組の深沢邦之リポーターは「これではお腹がすいて、もちません!」と悲鳴をあげた。
山田医師「その代わり、おかずとなる肉や魚、野菜には糖質がほとんどありませんからお腹いっぱい食べてもいいのです。ロカボの最大のポイントは、食欲で我慢しないことです。ロカボにはやせる以外にうれしい効果が2つあります。シミとかシワといった皮膚のトラブルは糖化反応、つまり高血糖が原因ですから肌が美しくなります。ほかのダイエット法では筋肉や骨も減り、老けて見えることがありますが、ロカボの場合は内臓脂肪から減っていくので、その心配がありません。また、メカニズムはよくわかっていませんが、睡眠の質がよくなることが研究でわかっています」
では、具体的にベストなおかずとは何か。山田医師は深沢リポーターと大型スーパーの食品売り場を歩き、1つ1つアドバイスをした。惣菜コーナーに来るとトンカツがある。
深沢リポーター「さすがにトンカツはダメですよね」
山田医師「大丈夫です。アブラはありますが、糖質はありませんから。アブラは肥満の原因にならない、むしろアブラをとると、エネルギーを燃やす体質になるというのが、これまでの常識を覆す最新の研究です。ただし、トンカツにかけるソースが問題です。糖分が非常に多い。むしろ、糖分がほとんどないマヨネーズがオススメです」
深沢リポーター「ええっ! マヨネーズって太る元でしょう?」
山田医師「ほかの調味料では、ケチャップが糖質多めなので注意が必要です。むしろレモンの絞り汁や鶏がらスープを味付けに使うといいです」
魚のコーナーでは、基本的に魚には糖分がないので、刺身や塩焼きなどほとんどがオススメだが、煮付けだけは要注意だ。みりんの中に100グラム中43.2グラムも糖質が含まれているからだ。みりんは脂肪肝を作りやすいため、ほかの料理にもなるべく使わない方がいいという。続いて来たのは野菜売り場。
山田医師「果物はヘルシーというイメージがありますが、糖質が非常に多いです。残念ながら、糖質制限ダイエットでは果物の量を減らすしかありません。ほとんどの野菜は低糖質なため問題はありませんが、ジャガイモやカボチャは例外。中でもサツマイモには29.7グラムも糖質があるので、最も注意が必要です」
これから焼き芋のシーズンなのだが......。