北朝鮮から韓国への亡命は珍しくないが、2017年11月13日午後、南北軍事境界線上にある板門店で亡命劇が起きるのは実に10年ぶりだ。東西250キロ以上にわたる南北の軍事境界線のうち、板門店は南北の兵士が直接対面する唯一の場所で、特別な待遇を受けた兵士だけが配置されると考えられてきたからだ。
それだけに、韓国側では「他の亡命と異なり、北朝鮮側に与える影響も大きいのでは」といった指摘も出ている。
4人が計40発銃撃、韓国軍消息筋「亡命者を殺傷する目的で無差別銃撃」
板門店では東西約800メートル、南北約400メートルを「共同警備区域(JSA)」として、韓国軍を中心とする国連軍と朝鮮人民軍が共同で管理している。ただ、JSA内のポプラの木のせん定をめぐって南北で衝突が起き、死傷者が出た1976年の「ポプラ事件」をきっかけに、JSA内でも南北に分かれて警備するようになった。
聯合ニュースによると、亡命が起きた翌日の2017年11月14日、韓国軍合同参謀本部のソ・ウク作戦本部長が国会で開かれた国防委員会で亡命劇の詳細を明らかにした。ソ氏によると、韓国軍は15時14分頃、北朝鮮側にある板門閣の南側を東から西に向けて北朝鮮兵3人が移動しているのを観測。直後に北朝鮮兵1人がジープに乗って南側に突進。下車して軍事境界線を南側に越えるのを確認した。これを見た北朝鮮兵3人と警戒所にいた1人の計4人が、計40発を銃撃。15時31分、兵士が軍事境界線の南側50メートル地点で倒れているのを発見し、韓国側兵士が北朝鮮側からの銃撃を避けるためにほふく前進して15時56分頃に兵士を保護した。
聯合ニュースは、軍消息筋の話として、
「軍事境界線の北側の地域から、亡命者を殺傷する目的で無差別銃撃を加えた」
と、北朝鮮側には兵士を殺害する意図があったことを伝えている。亡命した兵士は5~6か所を負傷。ヘリコプターで病院に運ばれ手術を受けたが、3日程度安静にした後に改めて手術が必要な状態。韓国側が本人から事情聴取できるようになるまでは時間がかかりそうだ。