「微増」報道が相次ぐ
今回の改定にあたっての基礎資料となるのが、医療機関の経営状況について厚労省が11月8日にまとめた「医療経済実態調査」。それによると、医療法人が運営する診療所(ベッド数20床未満)の2016年度の黒字額は平均で前年度比9%減の1044万円、医療法人が運営する病院(20床以上)は同13%減の3495万円で、人件費の負担などが重く、病院の経営状態は悪化傾向にあるという。日医は「きめ細かい医療サービスの提供を求められ、医療機関が雇用を拡大した結果」として、「産業界全体の賃上げ傾向が明らかになる中、医療従事者の賃金改善が遅れている」と、本体部分のプラス改定を求めている。これに対して財務省は、経営に関する数字の取り方など細かく分析し、論争し、マイナス改定の必要を訴える――と言った攻防が年末に向けて繰り広げられるはずだ。
ところが、今回は、本体部分の「微増」という報道が、早くも相次いでいる。
予算編成作業は8月末の概算要求の締め切り後、財務省による各省庁からのヒアリングを経て、10月下旬の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)で財務省が大枠の考えを示し、各省庁との攻防が本格化、最終的に12月下旬に政府案が決定するという流れだ。今回も10月25日に財政審があり、社会保障費について、財務省が診療報酬のマイナス改定を打ち出して号砲が鳴った。
ところが、報道の出足は例年になく速い。まず産経が「診療報酬、医師の技術料微増へ 来年度、政府検討 薬価は下げでマイナス改定に」(11月3日)と報じたのに続き、医療経済実態調査を受けた11月9日朝刊では朝日が1面トップ記事で「診療報酬マイナス改定へ 薬価下げ 診察料は微増検討」と打ち、毎日も同じ日の3面で「医師技術料は微増 診療報酬改定見通し」と報じた。