患者側弁護士である医療問題弁護団 (安原幸彦代表、団員約 250人) の40周年記念シンポジウムが2017年10月28日、東京・イイノホールで開かれた。
1976年 9月の結成から医師と患者の関係や、医療関係者を取り巻く労働環境などを医療事故の原因と指摘してきたが、今回は40年の活動を「医療現場に残された現代的課題」のタイトルで分析、整理し、 8人の弁護士が発表、続いて患者団体代表、病院側弁護士なども交えたパネルディスカッションが行われた。
交通事故の 4倍の人が医療事故で亡くなっている
報告は多岐にわたった。たとえば、基本になる医師・患者関係については、米国からのインフォームド・コンセントは「説明と同意」という狭い意味にとどまり、今日まで、説明不十分が続いていると指摘した。そのうえ、事実上制限なしの長時間労働が医療現場の労働強化になり、「医療の安全」を脅かしていると分析。医師の 7割が「当直明けの手術で質の低下を感じる」、6 割が「長時間労働が医療ミスを誘引」と考えていることから、診療以外の業務を整理し、主治医制から交代制への転換なども提言した。
チーム医療や交代制では連携が重要だが、医師と看護師・薬剤師などの上下関係、医師と助産婦など業務範囲の重複、医師と技師の分担でミスが生じている。病院内のチェックシステムは進んできたが、医療安全室の権限がまだ弱いこと、事故調査制度などの不備で外部からの目はさらに届きにくい。安全施策に対する保険点数の配分など経済的手当ては不十分なままだ。
弁護団はまた、聖職者、弁護士と並ぶ医師のプロフェッション論を展開し、医療界全体が自己規律を高め、意識改革や相互チェック、さらには違反者への懲戒や再教育が必要とも提言した。
パネルディスカッションでは、元 NHK記者の隈本邦彦・江戸川大学教授が、全国で年間 2万2000人、交通事故の 4倍の人が医療事故で亡くなっていると推計し、患者を救うため国はヒト、モノ、カネをつぎ込むべきなのに、政治、社会の無理解、医療界の対応に問題がある、と鋭く指摘した。
(医療ジャーナリスト・田辺功)