「小金」で見せつけた「力量」
これまで、3大格付け機関の中国に対する格付けの下方修正は、4回発生している。
中国が今後数年間に債務が膨れ上がって負債比率が上がり、経済の低成長により中国の財政能力を弱めることを危惧したものだ。S&Pやムーディーズは中国のソブリン・レーティングを下方修正し、フィッチも2013年の下方修正を維持し、海外投資家が中国の債券市場参入に慎重になるよう注意喚起している。
これに対して中国財政省は、「評価の下方修正は中国政府がサプライサイドの構造改革を深化させ、総需要を適度に拡大している現状を過小評価し、中国経済が現在直面している困難を過大評価している」と反論した。
中国の債務残高はたしかに世界最多だが、近ごろはすでに改善しつつあり、「格付け機関は古い判断で中国を見ている」と中国政府は考えている。
今回の債券発行のタイミングも微妙で、ちょうど中国共産党第19回党大会の翌日だった。
現在、中国の外貨準備高は3兆ドルに達しており、20億ドルのソブリン債券は実際には微々たるもので、政府には融資を求める強い動機はない。債券発行の象徴的な意義の方が、投資資金の募集より格段に大きい。
それは、第1に経済面で、海外投資家の投資意欲を通じて中国経済の先行きアピールをすることに意味があった。これについて『ウォールストリート・ジャーナル』は、「中国は木曜日に記録的に低い利率で20億米ドルの債券を発行したが、そのレベルは米国国債より若干高くなったにすぎない。これは、投資家が世界第2位の経済体の財政に信頼を寄せた結果である」と論評した。
第2は政治面で、党大会が閉幕した翌日のこの行動は、欧米資本主義システムの重要な構成部分と見なされる3大格付け機関に対する直接的な反撃であり、世界に中国の力量を見せつけたことである。
中国は今回、20億米ドルという小金を使って、国際資本の中国に対する予想を覆したということになる。
(在北京ジャーナリスト 陳言)