陰茎が著しく湾曲している男性はがん発症リスクが高い――。アメリカンジョークなどではなく、2017年10月31日に開催された米国生殖医学会の年次総会で米ベイラー大学のアレクサンデル・パストゥシャック博士らによって発表され、すでに学術誌にも掲載された。
陰茎が曲がっていること自体はどの男性にとっても当たり前のことだが、一体なぜがんリスクに影響するというのか。
直角に近いレベルで湾曲するペロニー病
男性の陰茎が曲がっていることはおかしなことではなく、勃起時には顕著に確認できる。しかし、今回パストゥシャック博士らが問題視しているのは「ペロニー病(ペイロニー病とも)」という病気による「著しい湾曲」だ。
ペロニー病は陰茎内の繊維組織が炎症を起こして厚くなってしまい、陰茎が変形、収縮してしまう病気。そのせいで勃起時には直角に近いレベルで湾曲したり、捻じれているかのような状態になってしまう。
命に関わるような病気ではなく、治療しなくても数か月程度で回復することもあるとされているが、湾曲の度合によっては勃起不全や性交時の挿入が困難または不可能になるなど性機能を損なうこともあるため、決して軽い病気でもない。
これまでは原因不明とされてきたペロニー病だが、父親が発症している場合、高確率で子どもも発症することがわかっており、近年行われたいくつかの研究ではペロニー病に関係していると思われる遺伝子も特定されている。
2012年にはオランダのフローニンゲン大学によって「WNT2」という遺伝子がペロニー病の進行に関与している可能性が突き止められたが、2017年にオーストリア・ウィーン医科大学が「WNT2ががんの進行に影響している可能性がある」との研究結果を発表。
「ペロニー患者はがんリスクも高いのではないか」との疑念が持ち上がっていた。
そこでパストゥシャック博士は、民間企業の健康保険から収集した2億人以上の健康データ「Truven Health MarketScan」から2007~2014年分のデータ(平均年齢49.8歳)を抽出。
ペロニー病の男性4万8423人、勃起不全の男性117万7428人、健康な男性48万4230人を最低でも4年間以上追跡した結果から、がんの発症率を比較した。
その結果、ペロニー病の男性は勃起不全の男性に比べ全がんリスク(すべてのがんの発症リスク)が10%高くなっていた。その他にも、胃がんリスクが43%増加、メラノーマ19%、精巣がん39%となり、一部のがんでは顕著にリスクが上昇していたのだ。