「犯罪『被害者』の写真利用について、社会的意義を正面から認めた判例は...」
また、座間の事件のように、被害者が死亡している場合に問題になるのは、「厳密には当該被害者のプライバシー権ではありません。被害者ご本人はすでに亡くなってしまっているため、法律上はプライバシー権等の権利の主体になることができないからです」と西原弁護士は言う。その上で
「この場合に問題になるのは、被害者遺族の『敬愛追慕の情』が、報道により侵害されたといえるかということになりますが、泣き寝入りにならざるを得ない現状には変わりありません」
としている。
一方で、顔写真を含めた報道に何らかの社会的意義を認めた例はないか。この点は
「報道機関は表現の自由、報道の自由を有しており、それに社会的意義を認める判例は多くありますが、犯罪『被害者』の写真利用について、社会的意義を正面から認めた判例はあまり見当たりません」
と述べる。参考までに、爆発事故で死亡した被害者の顔写真を報道された遺族が、報道機関に損害賠償請求の訴訟を起こした津地裁判決(15年10月28日)を紹介した。判決では、「多数の死傷者を出し社会的関心の高かった本件事故の内容等を報道する過程で、被害者であるXの顔写真として、他の被害者と並べて本件遺影を報道したもので、本件遺影を報道することが不必要であるとか、不当な目的によるものであるということはできない」として、遺族の請求を否定した。