トランプ大統領の訪日の前、大統領の娘で大統領補佐官のイバンカ氏が来日した。元モデルらしく身長が高く顔が美しく小さいのでミーハー的に驚いたが、その際の報道でも興味深いものがあった。2017年11月3日の「イバンカ基金に、安倍首相が約57億円拠出を表明」という報道だ。ほとんどの記事で同様な表現だった。
これに対して、福島みずほ参議院議員から、「安倍総理のイバンカさんの基金に57億円拠出するという表明には違和感がある。イバンカさんはトランプ大統領の娘。大統領の来日に合わせて、安倍総理がトランプ大統領にプレゼントをしたように見えかねない。なぜこのタイミングなのか?しかも個人的なプレゼントではない。みんなの血税だ」とのツイートがあった。
拠出は世銀内基金へのもの
一方、佐藤正久・外務副大臣は「誤解を招きやすい『イバンカ基金に、安倍首相が約57億円拠出』報道 基金設立にイバンカ氏も関与したが、実態は発展途上国貧困対策の一環で、女性起業家支援基金を世銀内に設置するもの。日本は既に7月に拠出表明、原資は外貨準備高余剰金」とツイートした。
ただし、その後、「『世界女性会議WAWの総括、女性起業家資金イニシアチブの情報発信の強化と訂正』 外務省担当とWAW成果、世銀の女性起業家資金イニシアチブへの今後の進め方等を議論。先日、原資は外貨準備高余剰金とツイートしたが、これは誤り。訂正し、お詫び申し上げる。今後、拠出の為の予算措置が必要」と一部訂正があった。
福島議員のツイートのうち「みんなの血税だ」の以外については、佐藤外務副大臣のいう通りで、福島議員は間違っている。イバンカ氏への個人的なプレゼントではなく、世銀内基金へのものだ。これは、外務省のホームページにも7月8日付で出ている。
では、「血税」の部分はどうかといえば、佐藤外務副大臣も訂正していることから、今のところ福島議員の方が分がいいように思える。
一般会計処理か、それとも...
もっとも、これは「今のところ」である。外務省は、この拠出について来18年度予算要求を一般会計で行っているが、これはあくまで今の予算要求段階だ。実際に、年末までの来年度予算が作られ、その結果を見ないとなんとも言えない。
筆者の見通しとしては、そのまま外務省の予算要求が認められる可能性よりも、金額は認めるものの形式として一般会計ではなく特別会計で処理される可能性の方が高いのではないかと思っている。
というのは、このまま一般会計で処理すると、来年の通常国会で、野党が「待ってました」とばかりに質問し、予算の国会審議に支障がでるかもしれないからだ。それにもまして、この程度の予算処理にうってつけの外為特会という特別会計があるからだ。
外為特会の資産は外貨準備でもあるが、資産規模130兆円で運用収入は2.5兆円程度だ。そのうち57億円を世銀の基金に拠出しても大したことない。外為特会は、国債を原資として財テクしているようなものなので、「血税」とはいえないので、国会審議で足を取られる可能性も少ない。