東京・台東区立書道博物館に掲示されている貼り紙が「味わいがある」として話題を呼んでいる。貼り紙には「大してインスタ映えもしないので 写真撮影は御遠慮下さい」といった、注意書きにしては一風変わった文言が並ぶ。
加えて異彩を放つのは、直筆で書かれたことによる独特の「書体」。貼(は)り紙をつくった中村信宏さん(39)はJ-CASTニュースの取材に、同館創設者である「中村不折(ふせつ)の書体をマネて書きました」と話す。
「本物はこの百倍味わいがあります」
注目のきっかけは国語辞典編纂者の飯間浩明氏が2017年11月6日、ツイッターに「台東区・書道博物館で、『撮影禁止』などの注意書きが、どれもニヤッとさせる文言で面白い」と投稿したことだ。深く心に残ったようで、撮影禁止エリアながら「メモ用紙に模写し、帰宅後清書しました」と自身の書をアップ。そこには「大してインスタ映えもしないので 写真撮影は御遠慮ください」とユニークな表現で「注意」がされている。
飯間氏は文言だけでなく、「これ自体まことにインスタ映えする書体でした」「本物はこの百倍味わいがあります」と独特の書体も絶賛。「原物はよっぽどユーモアのある書家の方が書いたと思われます」と推測した。
ツイートは8日夕までに1万1000超の「いいね」を集め、リプライには「台東区書道博物館は、手書きの注意書きや案内も見所ですよね(笑)」と飯間氏と同様の思いの投稿もある。
実物は一体どんな「書」なのか、そして書いたのはどんな「書家」なのか。J-CASTニュース記者が11月8日、書道博物館を訪問した。
案内された特別展示室の中に、「大してインスタ映えもしないので」の注意書きはあった。書体を見てまず思ったのは、「しばらく眺めていたい」。「上手い」「達筆」「豪快」といったものではないが、肩の力が適度に抜けたような書体は不思議な魅力がある。
貼り紙は他にも館内各所に掲出されている。展示の仏像の前には「触れてもご利益はありません」とこれまたユニークな言葉が。階段の前には「急な段差になっております お気をつけてお上り下さい」。順路の最後には「御観覧お疲れ様でした。お忘れ物はありませんか?」。いずれも共通の書体で、ヨコ5×タテ50センチメートルほどの細長い紙に書かれている。