「90センチ・5キロ」男性器が超肥大化 寄生虫が起こす「悪魔の病気」の正体

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   陰茎のサイズが約90センチに、陰嚢も含めた男性器全重量は4.9キロ――。そんな男性のニュースを、2017年10月26日に「Daily Mail」や「Daile Mirror」「The Sun」など英国の主要大衆紙が相次いで報じた。

   いつものタブロイド紙によるネタ記事かと思いきや、ディスカバリーチャンネル系列のテレビ番組「Body Bizarre」に本人が登場。自身を苦しめてきた病気について語っている。

  • オピヨさんの今の夢は「妻を見つける」とのこと(画像はテレビ出演時のオピヨさんの姿)
    オピヨさんの今の夢は「妻を見つける」とのこと(画像はテレビ出演時のオピヨさんの姿)
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激しい痛み、象の皮膚のように硬く

   「Daily Mail」によると、巨大すぎる男性器に苦しめられてきたのはケニアのホレス・オウィッティ・オピヨさん(20)だ。

   10歳のころから男性器が膨れ上がり始め、数年で陰嚢や陰茎がこぶし大にまで達し、15歳ごろにはズボンを履くことができないほどのサイズにまで陰嚢が膨らみ、学校を退学することにもなった。

   また、激しい痛みと重量のせいで歩くことはもちろん座ることも苦痛で、ほとんど横たわった状態。どうしても移動しなければいけないときは、男性器を地面につけて引きずるように屈んで歩かなければいけなかったという。

   一緒に生活している家族にも相談したものの誰にも原因がわからず、オピヨさん自身も

「何かの病気であるということはわかっていたが自分の周りには同じような病気の人はおらず、ひょっとすると悪魔の仕業ではないかと思うようになった」

   と取材に対して答えている。

   もちろん、オピヨさんの症状は悪魔の仕業などではない。オピヨさんの治療を行ったケニアのジャラモギ・オディンガ病院のエマニュエル・ベジェ博士は「Body Bizarre」の中で「典型的なリンパ系フィラリア症だった」と語った。

   世界保健機関(WHO)のファクトシートによると、リンパ系フィラリア症は主に蚊が媒介する「フィラリア(糸状虫)」という寄生虫がリンパ系に寄生することで発症する病気だ。

   感染初期は無症状だが、やがて寄生されたリンパ系が炎症や発熱を繰り返すようになり、顔や手足、性器などがむくむ「リンパ浮腫」を発症。適切な治療を受けなければ進行して皮膚が異常に増殖・硬化して象の皮膚のようになってしまう「象皮病」となる。

   外見を損なうだけでなく、痛みや発熱、悪寒に常時襲われるため、患者の消耗も激しい。

   寄生虫自体が抗菌薬などで死滅しても、象皮病自体は進行してしまうことが少なくなく、患部を衛生的に保ち、継続的な治療を受ける必要がある。

   オピヨさんもさらに重症化する可能性があったが、症状を見かねた隣人が、自身のフェイスブックで「奇妙な病気に苦しめられている彼を助けてもらえないか」と投稿したところ偶然地元の知事が発見。寄付によって治療を受けることができた。

   幸いにも精巣や尿道は無事で、肥大化した陰嚢の皮膚を切除し陰茎を通常の形状と大きさに再構成することで、今では一般的な男性器のサイズになっているという。

熱帯・亜熱帯地域で1.2億人が感染

   リンパ系フィラリア症や象皮病は寄生虫の予防薬や駆除薬が確立されていることから、医療・衛生環境の整った国ではもはやほとんど見かけることがない。

   日本では古くから象皮病が発生しており、葛飾北斎の『北斎漫画』にも「大嚢」という名前で肥大化した陰嚢を棒に吊るして運ぶ男性の姿で象皮病が描写されているが、WHOによると1976年には完全な駆除に成功しており、国内に患者は存在しないようだ。

   しかし、WHOのデータによると2016年時点でアジアやアフリカ、西太平洋、カリブ海、南米の一部といった熱帯・亜熱帯の54か国で9.4億人以上がリンパ系フィラリア症の感染リスクにさらされおり、1.2億人が感染していたと推計されている。

   蚊が媒介するという性質上、患者を治療するだけでは蔓延を防ぐことはできず、感染地域全体で数年間に渡って予防薬の集団投与と衛生環境の整備が必要だ。

   ただ、死に至るわけではなく、その他の病気に比べると患者数が少ないリンパ系フィラリア症は「顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases、NTD)」として放置される傾向にある。

   WHOは2020年までにすべてのリンパ系フィラリア症を制圧することを目標とする「ロンドン宣言」を発表し、各国政府や製薬企業に資金や治療・予防薬の提供を呼びかけている。

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