熱帯・亜熱帯地域で1.2億人が感染
リンパ系フィラリア症や象皮病は寄生虫の予防薬や駆除薬が確立されていることから、医療・衛生環境の整った国ではもはやほとんど見かけることがない。
日本では古くから象皮病が発生しており、葛飾北斎の『北斎漫画』にも「大嚢」という名前で肥大化した陰嚢を棒に吊るして運ぶ男性の姿で象皮病が描写されているが、WHOによると1976年には完全な駆除に成功しており、国内に患者は存在しないようだ。
しかし、WHOのデータによると2016年時点でアジアやアフリカ、西太平洋、カリブ海、南米の一部といった熱帯・亜熱帯の54か国で9.4億人以上がリンパ系フィラリア症の感染リスクにさらされおり、1.2億人が感染していたと推計されている。
蚊が媒介するという性質上、患者を治療するだけでは蔓延を防ぐことはできず、感染地域全体で数年間に渡って予防薬の集団投与と衛生環境の整備が必要だ。
ただ、死に至るわけではなく、その他の病気に比べると患者数が少ないリンパ系フィラリア症は「顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases、NTD)」として放置される傾向にある。
WHOは2020年までにすべてのリンパ系フィラリア症を制圧することを目標とする「ロンドン宣言」を発表し、各国政府や製薬企業に資金や治療・予防薬の提供を呼びかけている。