本人が「依存症」だと受け入れられず深刻化
ギャンブル依存症は「否認の病」といわれている。本人が精神的な病気と認識せず、自分でお金を工面しようと考え、問題がどんどん深刻化する。家族は家族で、治療や支援を受けるとは考え付かず、自分たちが何とか解決しないととお金を用意するなどして、本人や家族が打つ手がない所まで行き詰まり、病状を悪化させてしまうケースが多いと考えられる。
当事者と家族を支援する民間団体代表の田中紀子さんのもとには、毎月100件以上の相談が舞い込む。
田中さん自身も夫とともにギャンブル依存症を発症、回復した過去があり、支援のためには家族関係に介入するのも重要と考えている。
野球部の先輩に誘われたのをきっかけに野球賭博にハマってしまった啓太さん(仮名・20代)の母から相談を受けた田中さんは、ギャンブル依存症から抜け出したい人たちが共同生活を送り、一緒に回復を目指す施設を本人に勧めた。入所を条件に、債務先などへの連絡は田中さんが行うと約束した。
啓太さんは家族と相談した上、入所する日を連絡すると言った。しかし2週間後、啓太さんの母から、自分で病気を治すと主張して施設に行くのを拒否し、再び野球賭博に手を出して闇金に追いかけられていると相談が。母は啓太さんの代わりにお金を払ってしまったという。
再び啓太さんのもとを訪ねた田中さんは、これ以上悪化する前に施設で支援を受けるよう説得を試みた。啓太さんは激しく抵抗したが、田中さんの「そうやってギャンブルで逃げた経験が私もあるからさ」との言葉や、祖父母からの「もう無理だよ」「頼む、行ってくれ」との懇願を受け、渋々施設に行くと決めた。
今は仲間と回復プログラムを受けていて、母も家族会に入り、息子との関わり方を見つめ直している。
田中さん「依存症者には二つの感情がある。『やめたくない、やめるのが怖い』という気持ちも強いが、心のどこかでは『もうやめなきゃいけない、やめたい』という気持ちがある。必ず本人のためになると信じて、やめたい気持ちが上回るようにグッと引っ張り上げるイメージで活動している」
米国では、専門のトレーニングを受けた人が、介入者(インタベンショニスト)として本人と家族に支援を行っている。
田中さん「日本も介入できる人を増やしてほしい。家の中が竜巻のようにしっちゃかめっちゃかになっているのに終止符を打ってあげたい」