来日中のドナルド・トランプ米大統領が池の鯉にエサをやる場面の報道をめぐって違和感が持たれている。
テレビ各局の報道では、トランプ氏は升に入ったエサを匙でまいていたが、最後は升ごとひっくり返して終了。「もどかしくなったのか」「面倒になったか」といったナレーション付きで報じられた。だが、この直前の場面を見ると印象が変わる。
「少量のスプーンが面倒になったか、すぐに升をひっくり返して終了」
トランプ氏は2017年11月6日正午すぎ、東京・元赤坂の迎賓館を訪問。安倍氏とともに、升と匙を使って池の鯉へのエサやりを体験した。
同日夕からテレビ各局でその様子が報じられた。テレビ朝日系「スーパーJチャンネル」では、「笑顔をみせながら盆栽をみたり、鯉にエサをやったり。小さいスプーンではもどかしかったのか、最後は豪快に」というナレーションとともに、トランプ氏が池に向かって升をひっくり返し、一気にエサをやる様子が流れた。
フジテレビ系「みんなのニュース」も、「最初は丁寧に餌をまきますが、もどかしくなったのか、最後は升の中身を一気に投入。これには安倍総理も思わずこの表情」「トランプ流の豪快さを見せました」といったナレが入り、同様にトランプ氏が升を返す映像が流れた。
日本テレビ系列は「NEWS ZERO」で、「少量のスプーンが面倒になったか、すぐに升をひっくり返して終了。安倍総理も思わず苦笑い。だが、本人は満足そうだ」として上記と同様の場面が流れた。TBS系「Nスタ」は「鯉の餌やりを体験。日本滞在にすっかりご満悦の様子」とだけトランプ氏の表情を伝えつつ、やはり升をひっくり返す映像を放送した。
こうした映像と言葉からは、トランプ氏が率先して升のエサを一気にまいたように見える。だが、実際は少し異なるようだ。
「ニュースの切り取り方を考えるのに凄く良いケースですよね」
AFP通信は、このエサやりの場面を撮影した1分強の動画を公開。両首脳はしばらく匙でエサをやった後、一度後ろを振り向いたかと思うと、まず安倍氏が池に向かって升ごとエサをバラまいた。直後にトランプ氏が升をひっくり返し、手を振って池の前から去っていった。バラまきは安倍氏が先に行っていたというわけだ。この場面の動画は米NBCニュースのサイトでも見られる。
「面倒」「もどかしかったのか」といった言葉でトランプ氏の振る舞いが報じられていたが、こうした前後関係を知ったツイッターユーザーの間では
「トランプ大統領の鯉の餌やり、時間なくて安倍首相が先にやったからやったのにそれだけあたかも礼儀知らずみたいに取り上げるのは...」
「ニュースの切り取り方を考えるのに凄く良いケースですよね」
「経緯がカットされ、印象操作になっている」
「ささやかな印象操作を垣間見た感」
と違和感を抱く声が数多く出ることになった。
なおこの日、両首脳のスケジュールは当初の予定より押していた。エサやりの途中後ろを向いた場面で、スタッフに時間が迫っている旨を伝えられ、終えることになったとされる。