岡山市の小学校で2017年11月1日、児童25人が体調不良のため救急搬送された。体育館で合唱の練習中、体の不調を訴える子どもが続出したという。報道によると過呼吸の症状だったが、いずれも命に別状はない。
似たような事例は、学校に限らずコンサート会場でも起きている。しかも原因がはっきりしない。集団で過呼吸が発生する背景に、何があるのか。
「ワンオク」のコンサートでも発生
今年だけでも、「集団過呼吸」による救急搬送は数件ある。大阪・枚方市の小学校で3月8日、小学4年生の女子児童が音楽の授業中にけいれんを起こすと、ほかの子どもたちも具合が悪くなったとして、計14人が病院に運ばれていた。
8月1日には、京都市の高校で、ダンス部に所属する女子生徒7人が搬送された。このうち1人は熱中症だったが、残りの6人は過呼吸を起こしていたと8月2日付の産経新聞電子版が報じた。
学校だけではない。4月8日、千葉県の幕張メッセで行われた若者に人気のロックバンド「ONE OK ROCK」のコンサートでは、50人ほどが過呼吸や熱中症の症状を訴え、21人が搬送された。
これらのケースで、なぜ大勢の人が同時に過呼吸となったのか、はっきりしたことは分かっていない。ただいずれも、患者は低年齢とみられる。小学校や高校の子ども達はもちろんだが、「ONE OK ROCK」のファン層も若者が多く、4月のコンサートでも観客は10~20歳代が中心だったもようだ。
過呼吸は、精神的な不安や極度の緊張からも起こる。これが過呼吸症候群(または過換気症候群)で、日本呼吸器学会のウェブサイトによると「神経質な人、不安症な傾向のある人、緊張しやすい人などで起きやすいとされます」。特に若い世代が多い。質問投稿サイトを見ると、叱られた子どもが大泣きした末に過呼吸になったという相談がいくつも寄せられていた。
一種のヒステリーで感染することもある
医師・星野仁彦氏の著作「気づいて!こどもの心のSOS」(ヴォイス刊)に、過呼吸症候群に関する特徴がこう書かれている。
「10代から20代の若い女性に多く、中学生や高校生では、ロックコンサートなどで集団発生することもあります」
過呼吸症候群は一種のヒステリーで、感染することがある。「これは、自我が未熟で"被暗示性"が高まっているため」と説明している。子どもをはじめ若年層に多いのは、こうした理由からだ。
日本呼吸器学会によると、発作的に息苦しくなって呼吸が早くなり、必要以上に換気をすることで体の酸素が過剰に増え、二酸化炭素が急減する。これが意識障害やしびれを引き起こす。
対処法として、比較的症状が軽い場合は「ゆっくり話しかけて安心させ、適切な呼吸法を誘導します。ゆっくりと小さな呼吸を行い、可能であれば呼気を5秒以上かけて行うように指示します」。改善しない場合は、医師の診断を受ける必要がある。