法務省は「どれくらいいるか認識していない」
なぜ盗むのをやめられないのか。クレプトマニアの治療を行う数少ない医療機関のひとつ、赤城高原ホスピタル(群馬県)の竹村道夫院長によると、多くの患者が虐待や両親の不仲など問題家庭に育っていて、3割以上が摂食障害を合併しているという。
竹村氏「『ありのままのあなたでいてもいい』というメッセージを親からもらっていないと、このままじゃいけないと思い、自分でコントロールできるダイエットから拒食になったり、そこから過食嘔吐になったり。あるいは自分が報われていない気持ちがあると、元々持っているむなしさを解消しようと、とる方向に集中しやすい」
精神科医の松本俊彦氏「厳格な家庭で育ったり、今現在、例えば暴力をふるうパートナーとの関係に耐えざるを得なかったり、自分の力ではどうにも抵抗できない環境を生き延びる中で、一種の困った習慣として出てきてしまう人が多い」
薬物依存症の回復施設「ダルク女性ハウス」の上岡陽江施設長「社会と距離ができればできるほどやめる理由がなくなる。親しい人、大切な人のものだと判断できれば万引きを止める理由もあるが、孤立していったらどんどんわからなくなっていく」
番組でクレプトマニアの認識について法務省に聞いたところ、「窃盗の原因や問題は多様で個別に指導プログラムを行っている」「クレプトマニアがどれくらいいるか認識しておらず、特化したプログラムは行っていない」との回答だった。
松本氏「まだまだ研究が進んでいない現状もあるが、依存症の一種なので、どのような状況で万引きしてしまうのか振り返るようなプログラムが必要だと思う」
刑務所の中だけでなく、出所後の受け皿も不十分だ。
松本氏「地域の医療機関で対応できる場所がどれくらいあるかというと、極めて厳しい状況。医療の側もクレプトマニアの認識が深まっていないし、対応できる体制を整えているところがほとんどない。医療関係者の中でも犯罪という見方が大勢」