盗む行為に依存する「クレプトマニア」
  虐待や厳しすぎる教育が一因に

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   【ハートネットTV】(Eテレ)2017年11月1日放送
「窃盗がやめられない"クレプトマニア"」

   お金に困っているわけでも、物が欲しいわけでもないのに万引きがやめられない―盗む行為そのものに依存する「クレプトマニア(窃盗症)」の人が、刑務所に繰り返し入る窃盗犯の中に1~2割いるとわかってきた。

   背景には生育歴など、様々な要因があるといわれている。再犯防止に必要なのは治療だが、クレプトマニアの人を受け入れる医療機関はごくわずかだ。番組では、治療に取り組む医療機関と当事者たちを追った。

交友関係制限され、鉛筆で刺されたことも

   コータローさん(仮名、27)は、高校3年から万引きを繰り返し、窃盗で3回、計4年間服役した。17年8月に出所し、今は不動産関係の資格の勉強をしている。

   コータローさん「勉強は小さい頃から厳しく母にさせられてきたので、そんなに苦ではないですね」

   教育熱心な両親に育てられ、小学生の頃から時間があれば勉強するよう指導された。叩かれるのは日常茶飯事で、わからないと母から鉛筆で刺された。今も腕に痕が残っているという。

   高校生になっても友達付き合いや恋愛を制限された。期待に応えようと必死に勉強したが、大学受験を目前にし、思うような成績が出なくなる。

   ストレスを解消するために始めたのが過食だった。家族に隠れて家中の食品を食べ、吐くように。摂食障害を発症したのだ。

   コータローさん「唯一の楽しみが食べることしかなくて。吐いた時はすっきりするけどその後はよくない。でもそれが自分の中で刺激というか、現実逃避する手段だったから頼るしかなくて、ずっと繰り返し」

   過食に気付いた母に食べ物を隠されるようになると、貯金を崩して自分で買い込むように。しかしお金はすぐに底をつき、18歳の冬、ついに万引きに手を出した。

   コータローさん「とるのが悪いのはわかっていました。それよりもとにかく家に早く帰って食べて吐きたい気持ちしかなくて、罪悪感はそんなになかった。それからはお金があったとしても買わず、食べる、掃除する、歯を磨くのと一緒で、(万引きが)自分の生活の一部になっていました」

   スーパーで万引きしたある日、店内のベンチで盗んだものを食べていたら、「それはお金払ってないよね?」と声をかけられ、そのまま警察へ。初犯なので実刑は免れたが、その後も万引きを繰り返し、21歳で刑務所に入った。服役中は真面目に過ごしていたが、万引きをしたい気持ちは消えなかった。

   出所後は家族とも友人とも離れ更生保護施設へ。孤独感が強まる中、万引きは回数も量も増えていく。23歳で再び刑務所に入り、10か月服役したが、出所したその日には万引きしていた。

   コータローさん「刑務所を出てからの万引きは、欲しくない物でも手に取ったら何でも袋に入れて、袋いっぱいになるまで色んな店で繰り返した。更生保護施設でそんなにたくさんの物を抱えていたら明らかにおかしいので、とった物を捨てて帰っていたんです」

   1日を万引きに費やし、盗んだ物は捨てる。出所した6日後にはまた逮捕され、この時の精神鑑定でようやく「病的窃盗」と診断された。初めての万引きから8年経っていた。

   コータローさん「ほっとした。病気なら治療もできるから、それを知れただけでも大きな進歩だと感じました」

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