牛乳の紙パック上部にある屋根の部分に、小さな「くぼみ」があるのは知っているだろうか。
ツイッター上で、あるユーザーがこの「くぼみ」の存在について投稿したところ、「知らなかった」などといった声が相次ぎ、大きな話題になった。しかしこの「くぼみ」、いったい何なのだろうか。
正式には「切欠き」と呼ばれる
話題になったツイートは、
「料理人をしている弟の前で間違って乳製品買ったって話をしたら『コレ』(編注:上述した「くぼみ」)ついてるのが牛乳で、ついてないのは牛乳のような何かって教わった 知らなかった」
と、牛乳と乳飲料のパックを描いたイラストとともに2017年10月30日、投稿されたもの。11月2日現在リツイートが8万7000超、「いいね」については11万6000件超を獲得している。
投稿者はあくまで牛乳と、似たようなそれ以外の飲料を見分けるのに役立つ、という旨でつぶやきをしたが、ネット上ではそれ以上に、くぼみの存在について「知らなかった」という声や、「思わず家の冷蔵庫確認してしまった」といった声が上がり、話題となった。
正式には、このくぼみは「切欠き」と呼ばれる。一般社団法人日本乳業協会や一般社団法人Jミルクのホームページによると、これは視覚障害者などが牛乳と他の飲料を区別するためのバリアフリー対応の一環としてつけられている。
切欠きのついている反対側が空け口となっており、「切欠き」をつけるかどうかは、事業者ごとに任意で決めることができるため、つけていないメーカーもある。
切欠きは500ml以上の、屋根型容器の家庭用紙パックに1つだけついている。ただし、その中身は生乳100%で成分調整を行わない「種類別 牛乳」のみで、脂肪分を減らした「低脂肪牛乳」や成分の一部を除いた「成分調整牛乳」といったものにはついていない。牛乳を除き、屋根型紙パック容器の上端の一部を切り欠く表示は、消費者庁の「加工食品品質表示基準」で禁じられている。
76.9%の視覚障害者が牛乳と他の飲料の区別を望んだ
一般社団法人日本乳容器・機器協会の公式ホームページには、「切欠き」導入の経緯が詳しく記されている。
もともとはE&Cプロジェクト(現在の公益財団法人共用品推進機構)による、1995年4月の視覚障害者を対象とした「飲み物容器に関する不便さ調査」で、牛乳と他の飲料を区別したいとする人が76.9%(対象54人中)という結果が出た。
そこで、業界団体や業界各社、官庁などで作る検討会で協議し、2000年5月以降、試験的に切欠きをつけた容器を流通させた。同年8月から10月に視覚障害者などに再びアンケートをとったところ、概ね、識別を問題なく行えることが明らかになり、2001年9月に農林水産省から本格的に紙パックの牛乳に「切欠き」をつけることを発表。同年12月ごろから切欠きのついた牛乳の陳列がされ始めたという。