52.8歳。2017年衆院選、立候補者たちの平均年齢。そのちょうど半分、26歳。東京7区、無所属で立候補したのが、井上郁磨さんだ。
7区は注目の選挙区だった。立憲民主党・長妻昭氏をはじめ、自民・松本文明氏、希望の党・荒木章博氏といった有力候補が熾烈な争いを繰り広げる陰で、しかし井上さんはほとんどメディアに取り上げられることもないまま、3850票で落選した。
26歳の彼は何を考えて、何のために、何をしようと選挙に出たのだろうか。J-CASTニュース記者は、ツイッターのダイレクトメッセージ(DM)で取材を申し込んだ。
「会社作る系男子」が政治に目覚めた理由
投開票から3日後の2017年10月24日、指定された渋谷ヒカリエのカフェを訪ねると、ストライプのスーツ姿の井上さんが出迎えてくれた。はっきりした目鼻立ち、今風の「イケメン」だ。コミュ力も高く、席に着くなり、記者の名刺を眺めながら、仕事内容やJ-CASTの運営方針など、立て続けに質問を飛ばしてくる。
「商業活動がすごい好き。たくさんの人と会いやすいじゃないですか。人と仲良くなるネタがほしい。そういう感覚がすごく強いんです」
いわゆる起業家、本人いわく「会社作る系男子」である。大阪の高校を卒業後、さまざまなビジネスに携わってきた。現在は2016年に立ち上げたユニコーン(東京・渋谷区)の経営者として、ママ層によるインフルエンサーマーケティングサービス「ママグラマー」などを手掛ける。
一方、政治にはもともと関心が?と聞くと、「いえ、まったく」と即答だ。
そんな井上さんの転機となったのは、「ママ」たちとのやりとりだった。ある利用者の女性から、ママグラマーにかけている時間を「水増し」することはできないか、と相談を受けた。聞くと、保育所に子どもを預けるためには、労働時間がもっと多くないと、審査に通らないというのだ。
別に悪いことをしたいわけではない。単に子どもを育てたいだけなのに、「犯罪」に手を染めかけるところまで追い込まれる人がいる。
「物事は事業、利益を生む形にすればすべて解決できると思ってたんですよ。ところが、『リターン』がない社会問題だとそうはいかない。僕のような事業者だけではなんとかならないことって、結構あるんだ、と」