回転寿司チェーン「かっぱ寿司」を展開するカッパ・クリエイトは、2017年11月下旬から首都圏の十数店舗で、すし1皿に1個(「1貫」という数え方は意味に諸説あるので当稿で用いない)を乗せて税別50円で試験的に販売する。10月26日、発表した。「1皿に2個で税別100円」がかっぱ寿司を含めた回転寿司チェーンの基本パターンだが、女性や高齢者らもより多くのネタを楽しめるよう、「分割販売」を試す。
回転寿司業界は国内では今どき珍しい成長分野だが、それだけに競争は激しい。かつて売上高首位だったかっぱ寿司は他チェーンの攻勢や経営の迷走もあり、今では「4強」の中で4位に後退している。過去約10年にわたって3度の身売りを経験し、何度も再生を誓ってきたかっぱ寿司。1皿50円以外にも「平日午後食べ放題」の普及などにも挑戦する今度こそ、本当に巻き返しを図れるのか、注目されている。
試験実施の結果を検証し、全店舗実施も検討
かっぱ寿司の現在のオーナー、外食大手コロワイドが送り込んだ3人目の社長である大野健一氏が10月26日、東京都内で開いたイベントで新戦略をアピールし、「『あれも食べたかった』の声にこたえる。お客様が何を求めるかを聞き、スピード感を持って実現する」と強調した。「1皿50円+税」は試験販売での顧客の反応などを検証し、全店舗での実施も検討する。
また、6月に店舗限定で行って好評だった「食べ放題」を11月1日から22日まで、全店で実施する。男性が1580円+税、女性が1380円+税。客足の途絶える平日14~17時限定で、客は事前にウェブサイトかスマートフォンアプリで予約して訪店する仕組み。寿司のほか、麺類やデザートなども基本的にOKだ。大野社長は「『また行きたい』の声に全店でこたえる」と語った。さらに加えて、平日限定メニューを拡充し、2018年1月から「ハッピー平日」と題してランチセットや丼メニュー、デザートなどをそろえる。
かっぱ寿司はかつて回転寿司チェーンのリーダー的存在として全国に次々と店舗を開店し、庶民には高嶺の花だった寿司を1皿100円で提供するビジネスモデルを確立し、売上高でトップに君臨していた。転機となったのは、2010年に展開した「平日1皿90円」のキャンペーン。平日に客を呼ぼうという狙いは良かったのだが、店舗側の対応が追いつかず、「注文しても届かない」などのクレームの山を築いた。価格低下は「安かろう、悪かろう」の負のイメージを定着させてしまう副作用も招いた。結果として2011年には、あきんどスシローに売上高首位の座を明け渡した。業績が悪化し赤字基調が定着する中、コスト削減が商品やサービスの質を下げ、客足が遠のくという悪循環に陥った。
黒字転換できるか
かっぱ寿司の運営会社はこれと前後して資本関係がめまぐるしく変わり、経営が迷走した。2000年代後半に一時、「すき家」などを展開する外食大手ゼンショーが約3割の筆頭株主、2013年から14年にかけてコメ卸最大手の神明が約3割の筆頭株主、14年11月にコロワイドの子会社に――といった具合だ。ゼンショー時代にはスシローと、神明時代には元気寿司との経営統合が検討されたが、企業文化の違いなどからいずれも実現しなかった。
コロワイド傘下となった後も、コロワイドの送り込む社長は3人を数える。2人目の四方田豊氏は「安かろう悪かろう」のイメージを払拭すべく、ブランド見直し戦略を断行したが、子供たちに人気のカッパのキャラクターが消えたことなどがかえって悪評を呼び、業績的にも2017年3月期の純損益は58億円の赤字に転落した。2017年4月に就任した3人目の大野社長が、改めての「平日攻め」と変化球メニューに挑む、というわけだ。
競争が激しい回転寿司業界では、9月、最大手のあきんどスシローを運営するスシローグローバルホールディングスと5位の元気寿司がそれぞれの大株主である神明のもとで経営統合に向けた協議に入った。2位のくら寿司(運営会社くらコーポレーション)を引き離し、規模の利益を追求。業界としては大手4社体制が固まった。結果的に再編を拒否し続けたかっぱ寿司の4月~9月の既存店売上高は、4、6、7、9月にわずかながらもプラスになり、6か月連続マイナスだった前年、前々年に比べれば改善している。単独で生き残りを図る以上、もはや背水の陣。新戦略の効果で黒字転換できるかどうかが、まず問われている。