東芝が長寿アニメ「サザエさん」のスポンサーを降板する方向との報道がされたばかりだが、今度は「サザエさん」の放送そのものを「打ち切りにすべき」という意見が出始めた。
労働社会学が専門で、千葉商科大学国際教養学部専任講師の常見陽平氏は、「家族の在り方も働き方も、サザエさんで描かれるものは現実とズレすぎている」と強調する。
「ここは番組打ち切りという手もあるのではないだろうか」
経営再建を続ける東芝の「サザエさん」降板報道は2017年11月1日になされた。後継スポンサーが見つかれば2018年3月末にも切り替わる可能性がある。
降板報道の衝撃は大きく、ツイッターなどでは「放送は続いて欲しい」と番組存続を願う声が盛んに投稿された。だが、真逆の意見が著名人の間でも沸々と湧き起っている。
「ここは番組打ち切りという手もあるのではないだろうか」。常見氏は1日夜、ブログにそう書いた。「家族の枠組みが変わりつつある中、昭和の憧憬時代劇を流されても困るのである」「世間とずれた『サザエさん』」「今後の社会、会社、家族を問い直す意味でも」といった言葉が並ぶことから、家族・社会像などの点で劇中と現実との間に強いギャップを感じているようだ。
また「国民を明日、会社や学校に行きたくなくさせるあの破壊力はいかがなものか」とも記述。「日曜日終了」の代名詞たる「サザエさん」を見て生じる憂うつな気分は、「サザエさん症候群」の俗称でも知られる。
「続けるなら『これは誰でもそこそこ幸せになれた昭和という時代を描いた時代劇です』とテロップを入れて欲しい」と提案も。ただし「もし番組を続けたとしても、娘には、『サザエさん』は見せない。彼女は21世紀を生きるのだから」という。
J-CASTニュースの2日の取材に応じた常見氏は、「時代に合わなくなりましたよね。家族でテレビを見る日曜夜に毎週放送するアニメではないでしょう。昭和ノスタルジーでしかない。家族の形態も、働き方も、『サザエさん』と現代とでは違います」と話す。
「おそ松さん」のように「リメークするのも良い」
常見氏は「娘には見せない」の真意も「教育上よくないと思うからです。自立した女性像が描かれていない」としていた。労働社会学が専門の常見氏。「女性が働くのは『働かざるをえない』という側面をもつ場合もあります」といい、作中で現代に即した女性像を描くとすれば設定を見直す必要があるとの考えだ。
「サザエさん」の原作漫画は1946年、アニメは1969年に開始。戦後から高度経済成長期の昭和日本を舞台に描く「家族の日常」は、現代のそれとは隔たりがあるとしている。1960年代の漫画「おそ松くん」の主要キャラを大人にして2010年代にリメークしたアニメ「おそ松さん」を引き合いに、常見氏は「続けるとすれば『サザエさん』をリメークするのも良いと思います」と提案した。
こうした「打ち切り」を主張するのは常見氏だけではない。病児保育を手がける認定NPO法人フローレンスの駒崎弘樹代表理事はツイッターで1日、東芝の降板報道の記事リンクを貼りながら「これを機にサザエさんは終了した方が良い」と投稿。「昭和の家族像を押し付け、サザエさんがパートに出たかと思えば『子どもが寂しがってる』という理由で辞めるような、ステレオタイプな育児観を撒き散らす。サザエさんの放映はもはや、百害あって一利なし」と斬って捨てた。
駒崎氏の投稿には、長島昭久衆院議員が同日に反応。「終わらせるのはもったいない気もするので、ひとり親家庭と共働き家庭を足すと全世帯の7割に達する現代の家族の実態に合わせて再構成し、今日的な社会課題の解決に真剣かつ明るく取り組む地域コミュニティの物語に仕立て直したら如何でしょうか?」と、「リメーク案」を提示していた。